グレゴリアン・ビートルズ

THE BEATLES GREGORIAN SONGBOOKというCDを買いました。数多くあるビートルズのカバーアルバムのなかでも異色のCDでしょう。タイトルそのまんま、ビートルズナンバーをグレゴリアンチャント風に歌ってしまおう、というアルバム。ただの企画アルバムかと思いきや、中身はかなりしっかりしてます。僕はグレゴリアンに詳しいわけではないから厳密な事はわからないけれど、少なくとも音響と唱法はかなり高度にグレゴリアン。アルシス/テーシスも自然だし、旋法らしく聴こえるようにフレーズ末に尾ひれをつけて変更を加えていたり、更には先唱が入ったりもしています。(笑)基本的にはビートルズのメロディをそのまま使っているため、あからさまに三和音が聴こえる場面があったりするので、少し注意すればグレゴリアンではない痕跡も聴き取る事は出来るでしょう。そういう部分も「グレゴリアン風な」部分との差異を考えながら聴けばまた楽しい。注意して聴かなければ、違和感を感じる場面は少ないし。ミクソリディア旋法が多くなるのは原曲がもともとミクソリディア旋法だからですね。ただ1曲、All You Need Is Loveで何度か出てくる半音進行がグレゴリアンの様式から大きく浮き立ってしまっているのが残念。この曲が他の曲と差し替えられていたら、知らない人を「これがグレゴリアンだ」と騙しきる事も出来そうだったのに。CDにはpdfファイルも入っているので、パソコンで楽譜も見れるようになっています。ネウマ譜じゃなくて五線譜なのが残念。ただ、CDの方は五線譜どおりには歌われていません。アゴーギグが豊かに加えられています(多分キロノミーで合わせているんでしょう)。この楽譜は、もしかするとグレゴリアンの唱法のレクチャーなんかで使えるかもしれませんね。楽譜どおりにビートルズを歌った後でキロノミーを使ってグレゴリアンへの変貌を体感させるとか。ライナーノートも凝っているし、面白いCDです。これは買い。


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