加賀取材2日目

加賀取材2日目。(自分のためのメモを兼ねて。)今日は昨日より早く朝8時にホテルで待ち合わせ。というのもTさんに近江町市場を見て頂きたかったからだ。朝の活気のある市場を期待して出かけた。のに、意外にも近江町市場の朝はゆったりしていた。どの魚屋さんも、ようやくその日の仕入れを陳列し始めている段階。食堂に至っては殆どが開店していない状態。(市場の中で食材を仕入れてから開店するからだろうか?)けど、それでもやはり、動き始めとは言え市場の活気には元気づけられるものがある。時々試食の商品を店のおじさんにもらいながら市場を一巡。僕にとってもこれだけじっくりと食材を見ながら市場をまわったのは初めての事だった。その後、お麩の名店不室屋に寄り、尾張町を抜け、浅野川をわたって東茶屋街まで歩く。金沢の中でも特別に風情溢れる地域です。ひととおり散歩するだけでも時間の流れがゆったりします。東茶屋外街を見終わった後は菓子文化会館と、隣の金沢蓄音機館を立て続けにまわる。どちらも少し駆け足気味になったのが残念。次のチャンスには時間をかけてじっくりまわりたい。そしてその後は近江町市場に戻る。10時半を過ぎていた。この頃には先ほど閉まっていたお店も殆ど開いていて、普段どおりの活気ある市場の顔をしていた。そして早めのお昼というべきか遅い朝ご飯と言うべきかわからない刺身定食を頂く。魚もウニもとにかく甘い。東京ではなかなかこういう味にはありつけない。近江町の後には柿の木畠の「うつのみや本店」へ。Tさんは作詩のための資料として郷土の本を大量に買っていらっしゃった。(今回は新書店にしかお連れできなかった。古書店にもお連れすべきだったかも知れない。)30分ほどで本を購入した後、ホテルに一旦戻る。そしてホテルでNHKの記者Aさんと会う。Tさんが以前に別件の取材でお会いしていたAさんが今は金沢勤務。それでお会いする事になった。Aさんの話し振りの、あまりに完璧な応対に驚く。そのまま教科書にしても良さそうな素敵な話し振り。「仕事柄しっかりしている」という水準を遥かに超えているような気がする。世の中には凄い人がいるものだ。20分ほど話しただろうか。後に予定があったのAさんを見送る。そして午後からは、Mさんの運転する車に乗せていただいて、ずっと白峰村の方まで案内していただく事になる。まずは金沢市内から白峰村まで。その後、用事を果たしながら順に金沢まで戻ってくるコース。白峰村(現在は白山市白峰)ではUさん夫妻のお宅にお邪魔して、白山についての話をいろいろ聞かせていただく。招き入れて下さる時に「うちは2階暮らしなもんやさけ申し訳ないけど・・・」と2階に案内された。何だろうと思っていたら、その後理由がわかった。白峰のあたりでは雪が降ると1階部分が埋もれてしまうのだそうだ。だから生活の中心が2階になる、と。どこかで聞いた事もあったかもしれないが、すっかり忘れていた。リアリティのともなわない記憶はかくも脆いもの。Uさんの話もさることながら、人柄にもすっかり魅了された。穏やかで、本当に二人仲良く一緒に時間を過ごしているのが伝わってくるような気がする。自分も年をとってこういう夫婦でありたいな、と思う。Uさんのお宅の後は林西寺へ。以前は白山の頂上にあったと言う仏像を見せてもらう。とても長い間山野頂上にあったとは思えない、深みのある鈍い輝き。下山後に手入れしたのだろうか。腕のラインが見事だった。その後白山ろく民俗資料館へ。閉館直前だったのでゆっくり見る事はできなかったが、牛首紬(うしくびつむぎ)の製造工程を見る事ができた。機織りのリズムが印象的で、まだ頭に音がこびりついている。それにして、機織りの原理ってどうなっているんだろう。どの作業がどんな結果に繋がっているのか、じっと見ていても全くわからなかった。次は白山恐竜パーク白峰へ寄ったが、既に閉館。ただ、みやげもの屋さんは営業していたので少し資料を買う事が出来た。県外の人にはあまり知られていないかも知れないけど、このあたりからは恐竜の化石(の一部)が見つかっているんです。僕も小さい頃、父に連れられていって何かの化石を崖からとってきた覚えがあります。今は採掘禁止らしいので、きっと禁止される前の話です。そして少し手取川ダムへ寄った。ダムだけではないのだが、Tさんによると「金沢は水が豊か」なのだそうだ。僕は金沢が基準になっているのでそんなことを考えた事もなかった。やはり客観視する/されるという事は大切だ。次に向かったのは白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)。表参道からずっとアプローチを歩くと、木々の息吹を感じるよう。若々しい息吹ではなく、老成した大きな呼吸の息吹。それが神聖な場所であることを強く意識させる。拝殿の屋根には菊の御紋がしつらえてあった。何か天皇家の縁があるんだろうか?伊勢神宮と関係があるような事は説明書きに書いてあったけど・・・。丁度、宮司さんの勤務(?)が終了したようで、制服(?)のまま車に乗って帰宅していくのが見える。これは見ない方が良かった(笑)。そして再び表参道を降りて、今度は金沢へ。金沢での晩ご飯は「香林」というお寿司屋さん。Mさんの配慮でご馳走になった。(ごちそうさまでした)ネタが甘い!そしてちょっとずつ手をかけてあって、過不足無くおいしい。その上値段も適切とくれば、地元の人に愛用されるのもわかるような気がする。検索してもあまり出てこないということは、マスコミにはさらされていないお店なんだろうか?晩ご飯のあと、まだ時間がありそうだったので再び東茶屋街へ。夜は夜の風情がある。昼間は気づかなかったが、版画家クリントン・カーフさんの作品がディスプレイしてあるお店があった。あまりガイジンらしくなく、また日本人らしくもない作風が面白いと思う。絵はがきがあるようだったが、閉店後で買えなかったのが残念。その後は武蔵ヶ辻のスターバックスでコーヒーを飲みながら、Tさんとこれから作る作品について話す。今回、Tさんの中には種になる何かが芽生えたようだ。僕は詩になるのを待つしかない。そして詩が出てきた時に、その詩に寄り添うような音を生み出せれば、と思う。今回の取材はこれで完了。けれど、これから1年かけて四季折々の様々な風景をTさんには体験していただかなくてはいけない。一度では見えなかったものも回数によって見えるかも知れないし、何度見ても変わる事のない姿を再確認する事もまた必要なのだと思う。


  1. タラ’s avatar

    取材お疲れ様です。加賀に関する詩と曲が生まれる予定なんですね…!その土地ごとの詩って凄い郷土色が強かったり、独特のエネルギーを持ってたりしますよね。詩、曲の誕生を心待ちにしておきます。

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