ベルリオーズの管弦楽法

音楽之友社から新刊で出たベルリオーズの管弦楽法を早速購入。現代のオーケストラで使われる楽器がまさに生まれつつ/生まれ変わりつつあった時代の視点がふんだんに盛り込まれた管弦楽法。例えば管楽器の運指表などが含まれていないし、現在とは事情が異なる楽器事情が散見されるが、それでもそれぞれの楽器本来の姿と、それらが集合したオーケストラという有機的な存在がどのように発展成立してきたかが、時代の空気感を通して見えてくる。ベルリオーズの原文に対するR.シュトラウスの注釈も毒舌や魅力に富んでいて面白い。作曲を勉強する人には、情報が古いと言う意味で1冊目の管弦楽法としてはお薦めできないものの、2冊目以降に実際の経験と照らし合わせていく本としては強く推薦したい。演奏家や一般の音楽愛好家にとっても読み物として充分に面白い1冊だと思う。訳本ながら日本語に全く違和感がないのは素晴らしい。まだ若いこの訳者を起用してこの重要書を出版した音楽之友社の慧眼には敬服。Z社さんと違って、最近「良い仕事」の数が増えていると思います。願わくば傷みやすいソフトな紙質ではなくハードカバーの安定的な造本にして欲しかった。日常的に持ち歩けるようなサイズや重さの本ではないし、造本のために定価が1000円2000円上がったからと言って大きく印象が変わる価格帯ではないのだから(12600円)。どうしてもすぐに読みたかったので根性入れて移動中に読み継いだら、読了後には結構傷んでしまった。


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