ジェラルド・ムーア

「お耳ざわりですか -あるある伴奏者の回想 」に続いて「伴奏者の発言」を読了。前者よりも後者の方が実質的/技術的な部分に凝縮されている感じ。前者は当時の状況や、演奏家の素顔が見えてくる楽しさはあるけれど、後者にはそれがなくてその分、具体的なアドヴァイスがたくさんある。前者では幾分くどくも感じられた英国流?のジョークや皮肉が、後者では随分減っているのでその読みやすさも手伝っている。どちらの本もヘルムート・ドイチュさんの「伴奏の芸術」と併せて読んでおくと良い本だと思います。ピアニストは勿論として、声楽家や他の楽器奏者にとってはリハーサル時のピアニストに対するコミニュケーションを効率よくする効果があるんじゃないかな。またムーアの2冊は、音楽愛好家にとっても、「うまい伴奏」を出来る人とそうでない人の違いがどこにあるか聴き分け、また上手い人の上手い秘密をより深く味わうための良い指標となりそう。その点でドイチュさんのは内容が専門的に特化しているかもしれない。こうやって本を読むと当然のように聴きたくなるムーアさんの演奏。彼の場合ははっきりとコンサートキャリアを区切ったので「引退コンサート」のCDが出ています。http://www.hmv.co.jp/Product/detail.asp?sku=2204522枚組の前半がそのコンサート(Homage to Gerald Moore)。後半がスタジオ録音によるアンソロジー(Tribute to Gerald Moore)。ただし前半のコンサートの中にもうまくスタジオ録音を混ぜてあります。一聴するだけだと、本を読んで期待が高まっていた分(そして僕が最近の演奏水準により親しんでいる分)、残念な気持ちが芽生えます。でも、聴き慣れてくるとこういう演奏スタイルの良さが見えてくる。たしかにムーアは上手い。今日的な演奏傾向からすると主張が足りないきらいもあるけど、骨格として押さえるところは押さえてあるし、表情も豊か。ヘビーローテーションにはならないかもしれないけれど、時々聴いて自分の座標軸を確認したくなるようなCD。


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