昨日、映画の日を狙って久しぶりに映画を見てきました。見たのはイングマール・ベルイマンの「サラバンド」。どこかの評論家の紹介記事で「バッハの無伴奏チェロ組曲のサラバンドを軸に繰り広げられる愛憎の人間模様」なんて紹介されていたので、てっきりチェリストを目指している娘が人間としても成長しながら音楽的にも豊かになって、やがて周囲の人間関係にも雪解けの時が!・・・なんていう感じの音楽映画かと思って足を運んだのに音楽シーンが殆どないじゃん!音楽のレッスンの場面もあるんだけど、実際に弾き始めるには至らず人生相談。その後でちょっとだけ、娘さんがバッハの無伴奏チェロ組曲5番からサラバンドを弾くけど、ホンのさわりだけ。他には作中で一番の憎まれ役たる親父さんがオルガンを弾いている場面が少しあったくらいかな。劇中での演奏シーンは限られているけど、BGMとしては件のサラバンドをはじめとして、ふんだんにバッハが流れてきます。状況設定もかなりマニアックにクラシックです(アバド率いるグスタフ・マーラー青少年管弦楽団のオーディションがどーのこーのという話まで出てくる)。だけど、映画の主題にはバッハのサラバンドは絡んでいない。状況設定の一つとして音楽が使われているだけ。映画評論家はしっかりと中身見てから文章書けーー!!!とは言うものの、チェロを弾く場面とか、音楽家として成長して行く過程を求めずに見ればこの「サラバンド」はいい映画です。救いが見えそうになるのに奈落に落ちて終わるのも、これぞ北欧映画!という感じ。フレームを切り替えずに、じっくりと長回しの対話を見せる/聞かせるのも、人間の内奥をいやでも見つめさせられるようで良い。関係ない第三者でも説教されてる気分になるというか、ずんと胸に沈み込ませる効果がありますね。見てる方も時間が持続しますから。いやでも家族についていろいろ考えさせる映画なので、未婚者→既婚者→子持ち→離婚者→再婚者→確執保持者といった順で受け止め方がヘヴィーになっていくと思われます。僕の場合(※第二段階)は、とにかくを妻を大切にしておこうと心に誓い直したのでした。年を取ったらまた見てみたい映画です。この映画の前編「ある結婚の風景」は32年前にスウェーデンの離婚率を増加させるほどの社会現象を巻き起こした作品だったとか。同じ監督が、同じ役者でこれだけの年月を経てその後のストーリーを描けるのって珍しいんだろうなぁ。こちらの方は未見なので、どこかで見つけて見てみたいです。映画館では「ある結婚の風景」も見たであろう白髪の夫妻をたくさん見かけました。30年越しで作品を追うのも素敵ですね。
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