今日はお仕事少々。あとは編曲をしていました。12月にある混声合唱団 鈴優会 の定期演奏会のために頼まれている滝廉太郎の歌曲の編曲。条件は「滝廉太郎の曲で」ってことだけで、曲はこちらが選んでもいいんです。でも、滝廉太郎の曲って、名前の知名度に比べると意外なくらい知られてないんですよねぇ。かくいう僕も殆ど知らないんですが。「花」に関しては滝さん自身の手による合唱版があるので今回は断念。「箱根八里」は前に編曲してあります。(少しだけ手直しします。)あとは荒城の月とお正月くらいですよねぇ?「お正月」(もういくつ寝ると、ってやつです)だって滝廉太郎作曲だってのはあまり知られていないと思いますし。作品一覧を調べてみると「鳩ぽっぽ」とかが出てくるんですが、調べてみると「ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ」っていうあの曲じゃないんです。思わぬフェイント。ピアノ曲の「憾(うらみ)」なんてのは一部で有名かもしれませんが、平行調に転調する部分が僕にはどうにも気恥ずかしいのです。無理矢理合唱に置き換えられるような旋律でもないしなぁ。そんなこんなでどの曲を選ぶか、という段階で既に困っているんですが、資料をそろえない事には始まらないので、とりあえず今日は荒城の月を編曲していました。はるこうろうのはなのえんの「え」の音が半音上がっている異版があるのは知っていましたが、調べてみたらびっくり。滝さんの原曲のほうが、半音上がりだったんです。で、現在(多分)一般的に知られている半音上がりしない方の荒城の月は、山田耕筰さんの編曲なんだそうな。(なんでも当時の日本人には半音階的半音がなじまなかったそうで。)原曲の方を異版と思い込んでいたなんてあな恐ろしや。滝さん、すいません。で、問題になるのは著作権料。編曲として山田耕筰の名前を出してしまうと多分著作権料が発生。なのであくまでも僕の感覚に基づいて原曲を編曲した結果シャープが取れました。ってタテマエを取るんだろうなぁ。きっと。この曲は様々なアレンジが為されているだろうけど、山田耕筰のクレジットを見た覚えもないし、きっと誰もが同じタテマエでやってるんでしょう。あと12年経って、山田耕筰の著作権が切れたら状況が少し変わるのかもね。ちなみに、山田耕筰には「哀詩」というタイトルのピアノ曲があります。副題は─荒城の月を主題とせる更衣曲─となっていて、時代を感じさせます。並記してあるフランス語タイトルはPoeme Variation Melancolique(アクサン省略)変奏曲っていう訳語の前にははVariationのことを更衣曲と言ってたんですね。一人の人間がどんどん洋服を着替えていく(でも来ている人間の本質は変わらない)さまが見えるようで、味があります。もしかすると変奏曲というよりもわかりやすいかも。で、この曲の中身を見たらびっくりなんだな。いきなり驚くような和声進行で始まって、タダモノじゃなかったことをうかがわせます。その後に続く12の変奏もなかなかのもの。現在簡単に入手できるのかどうかわかりませんが、興味のある方は調べてみて下さい。
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