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音楽之友社から2006年のはじめに出ていたブルグミュラーの25の練習曲のNew Editionを入手。ピアノを習っていた方々にはよくお馴染みの曲集。そうでない人も例えば2曲目のアラベスクあたりはどこかで耳にした事があるのでは?僕も当然この曲は知っていて、既存版も持っているんだけど、春畑セロリさんの解説が素晴らしかったので勉強の為に買いました。先生向けと子供向けに軽く読めるタッチの文章でそれぞれの曲を紹介しているんですが、その中身が、実に本質的なんです。先生がこの本質部分をわかっていて、この本を使いながら25曲やり終えた頃には、きっと生徒(と、その生徒の聴衆)はかなり自由に音楽を楽しめるようになるだろうな、という気がします。もちろんブルグミュラーを終えた位では、技術的にはピアニストを目指せようはずもないです。でも、ブルグミュラーを弾ける位になれば、かなり自分で弾いて楽しめる音楽の選択肢はあるはず。なのに自分で考えられない・語れないが為に演奏の自由を手にできていない層の人たちに、大きな福音となるような本と見受けました。参考に、生徒のための前書きから引用:____この曲の、いちばん盛り上がるところは、どこ?どこで、もうすぐ終わるなって感じる?すごく上手だったら、どのくらいの速さで弾きたい?急に感じが変わったな、って思うところある?なぜ?____などの項目をたくさん挙げたあとで、____ おともだちと答えがちがってしまっても気にしない。きのうと答えがちがってしまっても気にしない。いま、あなたが感じたことを大切にしてくださいね。____と続きます。もちろん、他の部分では具体的に音の作用の根拠を問いながら解説が進むので「無茶苦茶」が「自由」ではない事は自然と感得できる仕組み。それにしてもピアノの教則本はやっぱり部数が出るんだなぁ。48ページあって、楽譜としては異例なくらいにページに装飾をあしらって、それで600円。

「お耳ざわりですか -あるある伴奏者の回想 」に続いて「伴奏者の発言」を読了。前者よりも後者の方が実質的/技術的な部分に凝縮されている感じ。前者は当時の状況や、演奏家の素顔が見えてくる楽しさはあるけれど、後者にはそれがなくてその分、具体的なアドヴァイスがたくさんある。前者では幾分くどくも感じられた英国流?のジョークや皮肉が、後者では随分減っているのでその読みやすさも手伝っている。どちらの本もヘルムート・ドイチュさんの「伴奏の芸術」と併せて読んでおくと良い本だと思います。ピアニストは勿論として、声楽家や他の楽器奏者にとってはリハーサル時のピアニストに対するコミニュケーションを効率よくする効果があるんじゃないかな。またムーアの2冊は、音楽愛好家にとっても、「うまい伴奏」を出来る人とそうでない人の違いがどこにあるか聴き分け、また上手い人の上手い秘密をより深く味わうための良い指標となりそう。その点でドイチュさんのは内容が専門的に特化しているかもしれない。こうやって本を読むと当然のように聴きたくなるムーアさんの演奏。彼の場合ははっきりとコンサートキャリアを区切ったので「引退コンサート」のCDが出ています。http://www.hmv.co.jp/Product/detail.asp?sku=2204522枚組の前半がそのコンサート(Homage to Gerald Moore)。後半がスタジオ録音によるアンソロジー(Tribute to Gerald Moore)。ただし前半のコンサートの中にもうまくスタジオ録音を混ぜてあります。一聴するだけだと、本を読んで期待が高まっていた分(そして僕が最近の演奏水準により親しんでいる分)、残念な気持ちが芽生えます。でも、聴き慣れてくるとこういう演奏スタイルの良さが見えてくる。たしかにムーアは上手い。今日的な演奏傾向からすると主張が足りないきらいもあるけど、骨格として押さえるところは押さえてあるし、表情も豊か。ヘビーローテーションにはならないかもしれないけれど、時々聴いて自分の座標軸を確認したくなるようなCD。

イギリスのアマゾンで偶然発見して注文していた、大好きな映像作家The Brothers Quayの作品を多数収めたDVDが届きました。送料を考えてもこの種のアートアニメとしては充分に安かった。場面場面が喚起するイメージの雄弁さが圧倒的で、創造力の豊かさと強靭さに敬服します。国内盤はもとより海外盤も廃盤状態が長く続いていたので、今回の入手は嬉しい。こういう↓色合いを見てピンと来る人にとっては刺激的な作家だと思います。http://www.dvdbeaver.com/film2/DVDreviews26/Quay_bros_short_films.htm「ストーリがはっきりしていないと受け付けない」人にはオススメできません。現代音楽の面から言えば、2000年のIn Absentiaのための音楽をシュトックハウゼンが書き下ろしているのが話題でしょうか。この作品に限らず、クエイ作品はどれも音楽が印象的に/効果的に使われています。#画像方式がPALなので、日本国内の一般的なテレビでは見る事ができません。変換機能のある環境か、パソコンのDVDで見る必要があります。

弦楽器の音楽雑誌「サラサーテ」2006年冬号を入手。表紙に「別冊 航空情報」とワケのわからない表記があったので調べてみたら、サラサーテは雑誌「航空情報」が出している別冊ムック本という位置づけのようです。http://www.fujisan.co.jp/pub/2751/音楽好きの航空業界関係者が発案した雑誌なのか??奏者向けの「サラサーテ」を日頃から愛読しているわけではなくて、今回の付録に宮沢賢治作詞作曲/林光編曲の「星めぐりの歌」のチェロ版編曲が収められていたから買ってみたのです。林光さんには混声合唱版の実に素敵な編曲があるので、そのメロディ置き換えただけの版かと思って買ってみたら、チェロ版は少し新しい要素も加えた新編曲でした。シンプルながら効果的なピアノパートが印象的な、賢治の曲に新しい生命力を与える編曲です。チェロの残響豊かなピチカートも活かされています。

古本で入手したジェラルド・ムーアの「お耳ざわりですか」読了。今では「アンサンブル・ピアニスト」という呼称も確立されつつあるけれど、ムーアの活躍した時代は未だ「伴奏者」が「ソリスト」よりも一段も二段も低く扱われていた時代。書名はマトモな音量で伴奏すると「ソリストを聴きたいのにピアノが五月蝿い」と言われた風潮に由来している。基本的にはこの問題と格闘してきたムーアの不平不満がつらつらと書かれているのだけど(笑)、共演者の名歌手・名奏者の人と音楽性が見えるような回想部分は、古い録音を聴き直してみたくなる。エリザーベト・シューマンとか、先日亡くなったシュヴァルツコップとかがとりわけチャーミングに描かれているなあ。ディースカウの卓越した音楽性・人間性にも改めて心惹かれる。「時代の記録」を越えて音楽的に面白いのは26章「私の仕事」。他人にとっては初見で演奏できる程度の曲であるシューベルトの「さすらい人の夜の歌(旅人の夜の歌)」の、非常にシンプルな音をどうやって練習して一つ一つの音の理想的なポジションを定位していくのかを細かく記述。人によっては、たった1ページの曲に対してここまでこだわるんだ!という驚きを感じるだろうし、「そうそう、そこまでやらないといい演奏にならないよね」と感じる人もいるだろう。いずれにしてもこの本の276・277ページは宝のような2ページ。こういう本を読むと、ジェラルド・ムーアその人についても改めて感心を持つわけですが、ステージ引退の公演ライブ録音が出ているようです。最後にステージで弾いたのは、ムーア自身の編曲によるシューベルトの「音楽に寄す」ピアノソロ版。http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=220452「伴奏」に心血を注いできたピアニストの最後のステージ演奏が、最初で最後のソロ演奏だなんて、なんて素敵なエピソードなんだろう。

CDを検索していて見つけた、サンフランシスコ響の特設サイトが面白かった。指揮者のマイケル・ティルソン・トーマスがわかりやすく春の祭典を紹介している。[A Riotous Premiere]ではハルサイ誕生にまつわるエピソード紹介。[Explore The Score]の方では、ハルサイの楽譜を見せると同時に音を聴かせて、(おおまかに)音に同期したバーが動いて、耳と目でハルサイが見える仕組み。全曲ではなくてハイライトだけど、第2部の最後が終わったあとには、演奏に合わせて指揮してみよう!のコーナーもついてます。(「演奏」に合わせる「指揮」は大きな矛盾を孕んでいるけど、まぁお遊びだしね)まさか2部の最後の変拍子部分を一般ユーザーに挑ませるつもりか?と思ったらそんな事はなくて、単純な2拍子と3拍子部分だけ。だけど3拍子の方(第1部の最後)はテンポが速いので、マウスで操作するとなかなか難しい。僕は満点取れませんでした。(もしかして、好成績だと変拍子にもチャレンジできるのかな?)サンフランシスコ響は、この方面への活動を積極的に広げているみたい。ちょうどバーンスタインとニューヨークフィルみたいな関係でしょうか。春の祭典以外では、ベートーヴェンの英雄コープランド全般チャイコフスキー第4交響曲が紹介されていました。

昨日、映画の日を狙って久しぶりに映画を見てきました。見たのはイングマール・ベルイマンの「サラバンド」。どこかの評論家の紹介記事で「バッハの無伴奏チェロ組曲のサラバンドを軸に繰り広げられる愛憎の人間模様」なんて紹介されていたので、てっきりチェリストを目指している娘が人間としても成長しながら音楽的にも豊かになって、やがて周囲の人間関係にも雪解けの時が!・・・なんていう感じの音楽映画かと思って足を運んだのに音楽シーンが殆どないじゃん!音楽のレッスンの場面もあるんだけど、実際に弾き始めるには至らず人生相談。その後でちょっとだけ、娘さんがバッハの無伴奏チェロ組曲5番からサラバンドを弾くけど、ホンのさわりだけ。他には作中で一番の憎まれ役たる親父さんがオルガンを弾いている場面が少しあったくらいかな。劇中での演奏シーンは限られているけど、BGMとしては件のサラバンドをはじめとして、ふんだんにバッハが流れてきます。状況設定もかなりマニアックにクラシックです(アバド率いるグスタフ・マーラー青少年管弦楽団のオーディションがどーのこーのという話まで出てくる)。だけど、映画の主題にはバッハのサラバンドは絡んでいない。状況設定の一つとして音楽が使われているだけ。映画評論家はしっかりと中身見てから文章書けーー!!!とは言うものの、チェロを弾く場面とか、音楽家として成長して行く過程を求めずに見ればこの「サラバンド」はいい映画です。救いが見えそうになるのに奈落に落ちて終わるのも、これぞ北欧映画!という感じ。フレームを切り替えずに、じっくりと長回しの対話を見せる/聞かせるのも、人間の内奥をいやでも見つめさせられるようで良い。関係ない第三者でも説教されてる気分になるというか、ずんと胸に沈み込ませる効果がありますね。見てる方も時間が持続しますから。いやでも家族についていろいろ考えさせる映画なので、未婚者→既婚者→子持ち→離婚者→再婚者→確執保持者といった順で受け止め方がヘヴィーになっていくと思われます。僕の場合(※第二段階)は、とにかくを妻を大切にしておこうと心に誓い直したのでした。年を取ったらまた見てみたい映画です。この映画の前編「ある結婚の風景」は32年前にスウェーデンの離婚率を増加させるほどの社会現象を巻き起こした作品だったとか。同じ監督が、同じ役者でこれだけの年月を経てその後のストーリーを描けるのって珍しいんだろうなぁ。こちらの方は未見なので、どこかで見つけて見てみたいです。映画館では「ある結婚の風景」も見たであろう白髪の夫妻をたくさん見かけました。30年越しで作品を追うのも素敵ですね。

THE BEATLES GREGORIAN SONGBOOKというCDを買いました。数多くあるビートルズのカバーアルバムのなかでも異色のCDでしょう。タイトルそのまんま、ビートルズナンバーをグレゴリアンチャント風に歌ってしまおう、というアルバム。ただの企画アルバムかと思いきや、中身はかなりしっかりしてます。僕はグレゴリアンに詳しいわけではないから厳密な事はわからないけれど、少なくとも音響と唱法はかなり高度にグレゴリアン。アルシス/テーシスも自然だし、旋法らしく聴こえるようにフレーズ末に尾ひれをつけて変更を加えていたり、更には先唱が入ったりもしています。(笑)基本的にはビートルズのメロディをそのまま使っているため、あからさまに三和音が聴こえる場面があったりするので、少し注意すればグレゴリアンではない痕跡も聴き取る事は出来るでしょう。そういう部分も「グレゴリアン風な」部分との差異を考えながら聴けばまた楽しい。注意して聴かなければ、違和感を感じる場面は少ないし。ミクソリディア旋法が多くなるのは原曲がもともとミクソリディア旋法だからですね。ただ1曲、All You Need Is Loveで何度か出てくる半音進行がグレゴリアンの様式から大きく浮き立ってしまっているのが残念。この曲が他の曲と差し替えられていたら、知らない人を「これがグレゴリアンだ」と騙しきる事も出来そうだったのに。CDにはpdfファイルも入っているので、パソコンで楽譜も見れるようになっています。ネウマ譜じゃなくて五線譜なのが残念。ただ、CDの方は五線譜どおりには歌われていません。アゴーギグが豊かに加えられています(多分キロノミーで合わせているんでしょう)。この楽譜は、もしかするとグレゴリアンの唱法のレクチャーなんかで使えるかもしれませんね。楽譜どおりにビートルズを歌った後でキロノミーを使ってグレゴリアンへの変貌を体感させるとか。ライナーノートも凝っているし、面白いCDです。これは買い。

SONGS 1906-1920 IGOR STRAVINSKYという楽譜をたまたま見つけたので買ってみたのですが面白い!ストラヴィンスキーは1882年生まれなので24歳から38歳にかけての歌曲がいろいろ入っているわけですが、その時期は「花火」に始まって所謂3大バレエ、兵士の物語やプルチネラを書いたあたりと重なっています。(前に日記に書いた、8重奏曲は1922年なのでこの時期の少し後)反復と複調の試みを次第にモノにしていく過程がよく見えます。彼の手が大きかったであろう事もピアノの音程の扱いから良くわかるし、その手の感覚から広い音域にわたって不協和な音をキレイに配置していく感覚を得ていったであろう事も想像できます。それから和音だけでは決して発想していないこと。どんな細かいパートも常に旋律の中に組み込まれるように計算されていて、複数のパートが合流するポイントで合点がいくように作られている。ロシア民謡を素材とした曲が多いけれど、これは確固たる土台があってこそ実験をやりやすかった、という事なのかもしれないな。歌詞は殆どがロシア語。意味はまったくわかりませんが、音の動きだけで楽しめます。発音がついたらきっともっと面白いんでしょう。まとまった歌曲集のCDでも出てないかな。1曲1曲音源は探していくのは骨が折れそうです。クラリネット3本(Es,A/B,Bassの3人)が伴奏している「猫の子守歌Berceuses du chat」あたりは是非とも聴いてみたい。#Doverにしては表紙の発色が美しいのもポイント。手にして気持ちよい鮮やかさです。

プーランクの演奏姿が拝めるDVDを手に入れました!時間がないのでざっと目を引く部分だけ確認。演奏だけかと思っていたら、聴衆を前にしてインタビューに答えて笑いを取るプーランクまで収録。これは嬉しい!けどこれを嬉しい!と思えるのはマニア以外の何者でもないでしょう。収録されているのは全て1960年前後の演奏で当然白黒の映像。音質も決して良くはない。ランパル(fl)、プーランク(pf)の初演コンビによるフルートソナタのII楽章も聴けます。デュヴァル(sop)、プーランク(pf)で歌が何曲か収録されているし、ジョルジュ・プレートルの振るRTFをバックに、フェヴリエと共演した2台のピアノのための協奏曲(これは全楽章)も聴けます。これらを聴いてみると(多分多くの日本人が勝手に感じている)全面的に感傷的な表情を付与する演奏をプーランクは求めていないのが分かったような気がする。わりあい淡々と流して、その分要所要所で絶妙なタメを持ってきてハッとさせたり。その事で構造の流れと表情が両立できている。演奏する人は見てみると参考になる部分もあるんじゃないかな。プーランク以外の演奏も収録されています。ランパル(fl)、ラクロワ(pf)によるフルートソナタ全楽章ではランパルが時々音型をごまかしている(笑)。フェヴリエやタッキーノのピアノ演奏もあるし、多分このあたりの顔ぶれは本人からリハーサルを受けた顔ぶれ。資料的な価値は高そうです。プーランクと一緒に買ったのが春の祭典、火の鳥、中国の不思議な役人の舞台(バレエとパントマイム)をまとめて収めたDVD。(だってまとめ買いしたら25%オフになったから・・・)特に中国の役人は、なかなか映像資料が見つからないので気になってたんです。文章では必ずストーリーも紹介されているような作品なのに・・・。こちらはまず中国の役人だけ視聴。ロシアの製作によるDVDで、いかにも古くさい画質と映像処理にのっけから萎えてしまいますが、慣れてくるとB級臭が妙に味が出てきて面白い。少し経った頃に登場する「中国の不思議な役人」役のヴィジュアル設定が、キョーレツに変態な雰囲気を醸し出してます。100m離れてても変態だってわかるような。マントを脱ぎ捨ててから後は、さながら昔ジャンプで連載していたセクシーコマンド(だっけ?)の様相。あまりのスゴさに画面から目が離せません。パントマイム自体やオーケストラの演奏(クレジットを読むと生演奏のようだ)は充分クオリティを越えています。20世紀前半の重要な舞台作品が一気に3つ揃うし、プーランクよりむしろこっちの方がお勧めかも・・・。大画面で見ちゃった夢に出てくる事間違いなし。さて、これから池袋の新文芸座に行ってきます。今日はオールナイトでシュヴァンクマイエル。そして明日の日中は静岡に往復。夜は東京で練習。と、ちょっとハードで楽しい二日間の始まり。

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