5年ほど前でしょうか。日本楽譜出版社さんから、何か出版したら良さそうな作品があったら紹介して欲しいと相談されて、僕は「他の出版社でも出ているようなクラシックの有名曲ばかり出しても面白くないから、演奏人口も多いのに国内楽譜が殆ど出ていないクラシックの管楽合奏シリーズが良い!」と答えました。とは言っても、その時にはあまり色の良い反応は帰ってこず「まぁそのうち機会があったら」くらいの会話で有耶無耶になったのを覚えています。

昨年の年明け頃だったかにも、再び同じ質問をされました。僕の答えは5年前と同じだったのですが、今度は日を改めて会う約束になったので、その時には何十曲かの「存在しているのに殆ど無視されているクラシックの吹奏楽曲リスト」を携えて相談の場に行ったのです。そうしたらこの時には前回とは反応が違って、出版社としてはどんどん新しい分野にチャレンジをしていきたいと。これまでやってこなかったような曲も出していきたいと。そういう反応が返って来ました。

そこで、シリーズ化するならまず最初はこのあたりでしょうと僕が提案したのが「スーザ:星条旗よ永遠なれ」、「メンデルスゾーン:吹奏楽のための序曲」、「ヴァイル:小さな三文音楽」といったあたりだったのです(実はこの時は他にも何曲か提案しましたが、準備が進行中なので伏せておきます)。

それから一年ちょっと。楽譜の版下を作って(全てコンピュータ浄書です。メンデルスゾーンとスーザは僕が担当)、解説者に依頼して翻訳を作って、レイアウトをして、といった出版の準備を経て、ようやく形になりました。

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今年で設立10周年になる静岡県伊東市のフルートアンサンブル IZUさんの、10周年記念演奏会のための委嘱としてフルートオーケストラ用のクリスマスソングメドレーを書きました。
コンサートのトリをかざるとの事で、全部で12分くらいの結構ボリュームのある編曲です。よく知られたクリスマス・ソングばかりを集めましたが、いろいろヒネリのある編曲になっていますよ。
フルートオーケストラには馴染みのない人も多いと思いますが、普通のフルートがたくさん登場するのはもちろん、ピッコロ、アルトフルート、バスフルートからコントラバスフルートまで、なかなか見られない珍しい楽器が登場するのも見どころ・聞き所です。

オーケストラ大のフルートアンサンブルの他、小さめのアンサンブルや講師の先生によるソロ・デュオと盛りだくさんのフルート音楽をお楽しみ頂けるコンサートです。

静岡県の伊東市は、東京からJRの鈍行に乗っても2時間前後で到着できる海沿いの素敵な街です。日曜午後のコンサートなので、前後に温泉に入って日帰り旅行するもよし!という事で、興味のある方は是非とも足をお運び下さい。

フルートアンサンブルIZU 10周年記念演奏会

【日時】 2011年12月11日(日)13時半開演(13時開場)

【会場】伊東市観光会館ホール(JR伊東駅より。タクシー・バス等もあり。徒歩の場合15分程)

【料金】一般1000円、学生500円

【指揮】仲戸川智隆

【出演】フルートアンサンブルIZU、フルートアンサンブルIZUジュニア、葵フルートアンサンブル(ゲスト)、樋口貴子(フルート)、坂野真由美(フルート)、白尾絵里(ピアノ)

先日お知らせしたアンサンブル・アイリス 戸田在住の音楽家によるファミリーコンサートが昨日無事に終了しました。

乳幼児も含めて、会場のピッツェリア・オオサキさんが満席になるほどのお客様がご来場下さり、アットホームな雰囲気に包まれたコンサートでした。アンケートの回収率が7割に達したことからも見えてくるように、企画・演奏者側とお客さんとの距離がとても近い時間を一緒に楽しむことができました。ご来場頂いたお客様、ありがとうございました。

もちろん質の保証された音楽や演奏は重要事項。それに加えて今回はターゲットを地元の戸田に絞った事で、音楽以外にお客さんと共有できる要素があったというのは大きいかもしれません。途中、僕がMCで触れた戸田の話もわりと好評で、帰りがけに僕に曲のことには触れずにトークがうまいですね、と声をかけてくださったお客様もいらっしゃいました。

アンサンブル・アイリス ファミリーコンサート

サン=サーンスの「タランテラ」を演奏中

単に地元の音楽家が地域で(他でも聴けそうな)音楽を届ける、というだけに留まらず、「ここに来れば他では聴けない音楽が聴ける」、そんな活動が増えると良いと思います。「ローカル」というのは決して「その他大勢」の事ではなく「その他のどれとも違う局所」なんですから。顔のある音楽と付き合っていきたい、と思うようになってきている今日この頃です。

なんとここでのお知らせをすっかり失念していました。

既に5ヶ月経ってしまいましたが、2011年3月に音楽之友社から合唱の新刊「おれは歌だ おれはここを歩く 〜アメリカ先住民の三つの詩」が発売されました。混声合唱とピアノのための作品です。

現在は平凡社ライブラリーに収められている金関寿夫さん翻訳の「アメリカ・インディアンの口承詩―魔法としての言葉」 に収められた詩から

  • 狩りの歌 (ナバホ族の口承詩)
  • ホピの子守唄 (ホピ族の口承詩)
  • 敵の死を願う呪文の歌 (チェロキー族の口承詩)

の3篇に作曲しています。

2004年に作曲。名島啓太先生の指揮する混声合唱団鈴優会によって初演されました。

おれは歌だ おれはここを歩く

当時主に考えていたのは、(1)ダイアトニックな機能調性の上に歪められた調的響きを盛り込む事と、(2)合唱の、集合体としての声で発散力ないし吸引力の強いエネルギーある表現を呼び込むこと。

例えば1曲目では嬰ハ短調にニ短調が混ざったような音階を作って全体を統一しています。「鹿がおれの歌ごえをきいてやってくる」と歌う合唱の変な音階の上り下がりが最初の発想。

2曲目では嬰ヘ短調とニ短調の間を揺れ動く子守唄が、やがて調性の境界線を超えた響きへと広がっていきます。

3曲目では打楽器的性格を強めたピアノパートと対峙する合唱が、足踏みも交えながら身体表現としての声のエネルギーを高い緊張度でつないでいきます。合唱団が作る「音とりMIDI」と実演との印象の乖離がとても広い曲。生演奏での体験を強くお奨めします。

コンクールでも使いやすいでしょうし、演奏会で取り上げてもお客さんに強い印象を残せる曲です。情緒的に歌っているだけでは全く形にならず、器楽的な発想で楽譜を眺める必要が出てくる、という点では合唱団の表現の幅を広げる経験としても有効でしょう。

高校生・大学生を中心とした若い声の合唱団、中人数・大人数の合唱団に向いています。是非楽器店、書店等でご覧ください。Amazonでお求めの方はこちら

新譜を含むコンサートのお知らせ。

僕はいま埼玉の戸田市に住んでいますが、この度、同じく戸田に住んでいる音楽仲間とファミリーコンサートを開きます。やはり戸田市にあるおいしいピッツェリアに出会えるお店、オオサキさんを会場としてお借りして、ケーキとお茶つきの気軽な雰囲気でフルート、クラリネットとピアノ、そして朗読までをお楽しみ頂けます。

 

日時 2011年8月28日(日)
開演 午後3時
料金 おいしいケーキとお茶がついて
大人2500円・中学生以下1500円
※3歳児以下無料・乳幼児可
演奏 アンサンブル・アイリス
(フルート 樋口貴子 、クラリネット 菅生千穂)
ピアノ 柏木薫(ゲスト)
曲目 愛のあいさつ (Cl, Pf)
「歌の翼」による幻想曲 (Fl, Pf)
タランテラ (サン=サーンス作曲:Fl, Cl, Pf)
となりのトトロ (Fl, Pf)
君をのせて(Fl, Pf)
さるかに(壺井一歩作曲:Cl, Pf, 朗読)
日本の憧憬(堀内貴晃編曲:Fl, Cl, Pf) ほか

拡大できるpdf版のチラシはこちら→familyconcert20110828

フルートとクラリネットの二人はなんと戸田市内の同じ住居の現住人と前住人。アンサンブル・アイリスは異色の「部屋つながり」アンサンブルです。

僕の編曲「日本の憧憬」はこのアンサンブルのために書いた、日本の四季の歌のメドレーです。こういう編曲はほのぼの懐かしい音楽が並ぶのがほぼ慣例ですが、「日本の憧憬」はかなり技巧的なカデンツァあり、音量大爆発ありで慣例に背を向けた、しかし骨太な編曲。

民話「さるかに合戦」を朗読つきの作品「さるかに」に仕立てた壺井一歩さんも戸田在住。今回のピアノを弾いて下さる柏木薫さんの「語りピアノ」の活動から生まれた「さるかに」では、現実的な音と実直に向き合い続ける壷井さんならではの、子どもから大人まで楽しめる豊かな時間を楽しめます。

ちなみに壷井さんとはこの他にフルートとクラリネットのためのデュオの編曲をリレー形式で共作してみたりもしました(詳細は当日のお楽しみ)。

 

戸田・戸田・戸田・戸田!と近所の音楽仲間が集まってお送りするコンサートです。戸田にお住まいの皆様に楽しんで頂きたいのはもちろんですが、市外の方のご来場も大歓迎です(意外と池袋や新宿、上野からのアクセスもいいんですよ)。8月28日はピッツェリア・オオサキでお待ちしています。チケットのお求め・お問い合わせは堀内までメールでご連絡ください。

  • JR埼京線戸田駅からお越しの方:
    国際興業バスの蕨54利用(4分乗車)、「中央六」下車 徒歩2分
  • JR埼京線蕨駅からお越しの方:
    国際興業バスの西川64・蕨54利用(3分乗車)、「中央六」から徒歩2分
    もしくは
    ぷらっとわらび南ルート利用(5分乗車)、「ふるさと土橋公園」下車 徒歩2分
  • JR埼京線西川口駅からお越しの方:
    国際興業バスの西川64利用(7分乗車)、「中央六」下車 徒歩2分

7月最初に日本楽譜出版社からバッハのブランデンブルク協奏曲第3番と第5番のスコアが発売されます。

―というだけなら新鮮味のあるニュースではないのですが、この新刊が「自筆譜のファクシミリ版」で、国内では初出版なので、ちょっと普通の新刊案内とは違います。そして出版の裏では僕もお手伝いしたので、そのお話を書こうと思います。

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新刊楽譜「上を向いて歩こう」のフルート三重奏編曲楽譜がトリプ・カンパニーから発売になります。作曲者はもちろん中村八大さん。

2つのバージョンが入って、パート譜つき。定価は1, 500円+税です。

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編曲の技術(1)の続き。
原曲の必要な声部を抜き出して、可能な限り音域を原曲通りにするだけが編曲じゃないよ、という話でした。

例に挙げたのはラヴェルのクープランの墓から「リゴードン」。
ピアノこの稿は、最初の2小節のファンファーレが終わった後のお話です。

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日本語でひとくちに「編曲」と言っても、その作業内容は大きく2種類に分けられます。

Transcription(置き換え。編成Aの曲を編成Bのために書き換える)とArrangement(編み変え。原曲の素材[多くの場合はメロディ、和音進行など]を残して、その他の部分を書き換える。例えば伴奏が変わったり対旋律が変わったり。編成が変わることも多い)の2種類。

後者ならば、必要に応じて原型を留めないにくらい作り替えても良いわけで、そうすると編曲者のオリジナリティを盛り込んだ名編曲、というのも想像しやすいですよね。

ところが前者の方、「編成の置き換え」の良し悪しはなかなか作業している当事者以外からはわからなかったりするものです。ですが、たまたま僕のところに編曲レッスンに通った末に最近仕上がった生徒さんの好例があるので、それを一例に、この「置き換え編曲」の世界を少しご紹介します。 Read the rest of this entry »

今年はいろいろとアウトプットをしていこうと思っていまして、留学中に身につけた、ぜひ日本の皆さんにも知って頂きたい視点や、留学前に書いた曲の楽譜や音源なども整理しながら公開していく予定です。

というわけでYouTube上で過去の音源を聴けるように専用のチャンネルを開設しました。

 

現時点では

を載せてあります。

掲載音源も少しずつ増やしていきますね。

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