たまたま見かけて、安さに釣られて買ってしまった10枚組のクラシックDVD。DVD1枚が200円の時代になりましたよ。奥さん。クレジットを見ても、ちょっと怪しげな名前ばかりですが、コチシュのモーツァルトとベートーヴェンが見れれば最悪でもモトは取れるかと思って手を出してみました。時間がないから全部の視聴は出来ていないけど、コチシュはとても素晴らしい内容だった。これはポイントが殆どぶれない、正当派の映像。それから伏兵的に良かったのがコンソート・オブ・ミュージックによるラッソと、ヒリヤード・アンサンブルによるオケゲム。どちらも変な演出が入っていて映像としてはビミョ〜な空気が漂うけど、演奏は高水準。コンソート・オブ・ミュージックってエマ・カ—クビーが所属していたんだね。メンバーまで気にしていなかったので、演奏後のクレジットで初めてわかりました。顔を見ても今の顔と違うという事は、いつの録画なんだろう(笑)エマ・カークビーといえば、古楽方面での活動が有名ですが、ホグウッドと録音しているストラヴィンスキーのCDがあって、こちらもなかなか素敵。ストラヴィンスキーと言っても新古典の曲だから、あまり志向が異なるわけじゃないけどね。
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全音から出ているシューベルト歌曲集を買ってみたら編集:田中伸枝となっていた。知らない名前だったので気にも留めなかったけど、この田中伸枝さんによる解説が予想以上に素晴らしかった。たいていこの種の解説って、今読むと鼻白むような時代がかった内容だったりするので、新鮮な驚き。初版は1964年の本なので、もう40年も前に活躍した人ですね。曰く「リートでは詩が音楽と共に大切な役目を持っていますが演奏となるとまず音楽の表現に専念するように心がけましょう。といって詩を軽んずる意味ではなくリートに於いての詩情は音楽を通じて現れてくるからです。 詩を解し、言葉の一々を知る事は大切な事です。これはリートの場合、音楽をより深く追求する手段として考える方が当然でしょう。自らの詩の解釈をもって名曲を左右しない、つまりシューベルトの音楽を損じないようにしたいものです。ところが詩やドイツ語の一々を知るに従って詩の気分や言葉に捉われてしまって肝心な音楽の表現に妥当を欠いている場合がよくあるものです。例を『魔王』にとって見ましょう。・・・」という感じ。このあとには魔王を例にとって、具体的な対処法をわかりやすく解説しています。「詩の方に捉われてその方から音楽の表現を強めようとするつもりであっても、結局シューベルトの音楽を音楽以外の要素でもって補うという冒険をする事になりますから余程注意せねばならない事です」ともある。まさに我が意を得たり!という感じ。声楽ジャンルに根強い、過剰なtext幻想とのギャップには常に違和感を感じていましたが、その違和感を明快に文章化してくれています。40年前って、まだまだドイツ中心の音楽史観で、クラシックが「教養」だった時代だろうけど、それでもこういう見識に辿り着けた人はやっぱりいたんだね。でも、田中伸枝さんの事を調べてみても曲集の解説は全音のシューベルト2冊しか担当していないみたい。出版当初から評判が良かったらもっと他の曲集にも書いていそうなんだけどなぁ。時代と合わなかったんだろうか。因みに、現在も活躍中のヴァイオリニスト田中千香士さんは田中伸枝さんの息子さんでした。そして、千香士さんの姉が、伝説ともなっているピアニストの田中希代子だったんですね。すごい家族です。
THE BEATLES GREGORIAN SONGBOOKというCDを買いました。数多くあるビートルズのカバーアルバムのなかでも異色のCDでしょう。タイトルそのまんま、ビートルズナンバーをグレゴリアンチャント風に歌ってしまおう、というアルバム。ただの企画アルバムかと思いきや、中身はかなりしっかりしてます。僕はグレゴリアンに詳しいわけではないから厳密な事はわからないけれど、少なくとも音響と唱法はかなり高度にグレゴリアン。アルシス/テーシスも自然だし、旋法らしく聴こえるようにフレーズ末に尾ひれをつけて変更を加えていたり、更には先唱が入ったりもしています。(笑)基本的にはビートルズのメロディをそのまま使っているため、あからさまに三和音が聴こえる場面があったりするので、少し注意すればグレゴリアンではない痕跡も聴き取る事は出来るでしょう。そういう部分も「グレゴリアン風な」部分との差異を考えながら聴けばまた楽しい。注意して聴かなければ、違和感を感じる場面は少ないし。ミクソリディア旋法が多くなるのは原曲がもともとミクソリディア旋法だからですね。ただ1曲、All You Need Is Loveで何度か出てくる半音進行がグレゴリアンの様式から大きく浮き立ってしまっているのが残念。この曲が他の曲と差し替えられていたら、知らない人を「これがグレゴリアンだ」と騙しきる事も出来そうだったのに。CDにはpdfファイルも入っているので、パソコンで楽譜も見れるようになっています。ネウマ譜じゃなくて五線譜なのが残念。ただ、CDの方は五線譜どおりには歌われていません。アゴーギグが豊かに加えられています(多分キロノミーで合わせているんでしょう)。この楽譜は、もしかするとグレゴリアンの唱法のレクチャーなんかで使えるかもしれませんね。楽譜どおりにビートルズを歌った後でキロノミーを使ってグレゴリアンへの変貌を体感させるとか。ライナーノートも凝っているし、面白いCDです。これは買い。
久しぶりに武満徹のスコアを買ってきました。
語りとオーケストラのための「系図」ー若い人たちのための音楽詩ーです。
語りに使われている詩は谷川俊太郎さんの「はだか」からの6篇。今年の2月になってひっそりと出版されていたのを最近見つけたんです。行きつけの池袋ヤマハは新刊の入荷が異様に遅いので(発売後1ヶ月以上経ってから入荷する事が多い)、たまたま銀座のヤマハに行った時に発見。音楽之友社や全音の新刊はホームページでチェックしてるけど日本ショットのページは滅多に見ないからなぁ。
この「系図」、かつて大好きだったんです。今も好きだけど。10年前、ちょうど大学受験をしている時に武満さんが亡くなって、作曲少年のご多分に漏れず武満教信者だった僕はショックを受けたわけですが、少し経ってからテレビで流れた特集番組の中でこの「系図」の存在を知るわけです。最初に聴いた時から強く惹き付けられました。更に少し経ってから発売された追悼盤CDにはじめて録音が収められたのですぐに購入して、それから数ヶ月間は、25分くらいかかるこの曲を毎日2回くらいは聴いていました。
60年代の武満さんの作品も当然知っていましたが、特に青少年用に書かれた曲とは言え、あの60年代の高密度な厳しい作風の武満さんが晩年にこんなにわかりやすくて豊穣な世界に行き着いた事にとても大切な意味があるように思えたので、部分的に耳コピしたり、一音も漏らすまいと覚えるくらいに聴き込んだものです。
初期の作品でサラベールから出版されている何曲かを除いて、武満さんの作品は全て日本ショットから出版される契約になっていた事は知っていたし、これだけわかりやすい武満作品なら売り上げも期待出来るはず。だからきっと早々にスコアが出版されるものと思いました。が、期待に反して「系図」のスコアは全然出版されない。しびれをきらして日本ショットに電話をかけて「出版の予定はないんですか?」と質問した事まであります。それも1年おきに3回くらいは(笑)。そのたびにショットの担当の人は「いま出版に向けて準備を進めていますので、もうしばらくお待ち下さい」と言っていました。
で、その「もうしばらく」が10年かかってしまったわけですね。今や僕の「系図」への想いも相当薄れてしまいました。思えば遠くへ来たもんだ。でも、楽譜が出たらやっぱり買いたい。楽譜を読んで曲の秘密を探ってみたいので、今日の購入となりました。で、家に帰ってまずやりたかったのはCDを流しながら楽譜を順にめくる事。
ところが!系図が入っているあのCDが見当たりません。まさか捨てるはずもないし、探せる限り探しても見つからない。結局今日のところはCDを諦めて楽譜をつぶさに読みふけっていました。
聴き込んだだけあって、意外に音色の実感が耳の奥に残っていました。やっぱり美しい曲だった。今日の収穫は2つ。
1つはオーケストレーションの素晴らしさの理由がわかった事。これが隠し味だったんだね、という所をいっぱい確認。
もう1つは、CDの演奏で「ゆれ」だと受け止めていたテンポの変化が、正確な記譜でコントロールされていた事です。作曲の人も見ているので細かい事を書きますが、小節1つで取るような早い4分の3拍子を設定して、その中で4分音符3つの小節、付点4分音符2つの小節、という具合にタイムを操作して結果的に頻繁にpoco accel.とpoco rit.を繰り返しているような効果を作り出しています。てっきり8分音符だと思っていた音が4分音符で書かれていたのは大きな発見でした。
8分音符で同様の操作をしようとしても、見た目の変化が複雑になりすぎるので、4分音符で書いた意味合いは大きいです。そういえばストラヴィンスキーが同じような事を語っていました。どの演奏を聴いても同じようにアゴーギクがついていた理由がやっとわかりました。ただ先例追従していたわけではないようです。
移動の途中に池袋のヤマハに寄った。新刊で出ているはずのバッハ平均律クラヴィーア曲集 第1巻~演奏のための分析ノート~(土田英介著/音楽之友社)を買いたかったのだけど、理論書のコーナーを見ても見つからない、作曲家評伝のコーナーにも無い、それならと思ってバッハのピアノ曲のコーナーも見てみたのだけど見つからない。(そのかわりにバッハ インヴェンション―分析と演奏の手引き(小鍛冶 邦隆, 中井 正子著/ショパン社)を見つけてしまったので資料用に購入)結局見つけることが出来ずなかったので、店員さんに書名を告げて探してもらった。そしたらさすがは店員さん、すぐに見つけて持ってきてくれたので無事に購入できた。購入できたのは良いのだけど「バレエ音楽」の棚からこの本が出てくるというのはいかがなものか。インヴェンションの分析本はピアノ楽譜のバッハコーナーに置いてあるのに、平均律クラヴィーアの分析本はバレエ楽譜のコーナー?まさか今バレエ界で分析的なバッハ演奏を使って踊るのが流行っているのでもないだろうし、やっぱりこれは店の不勉強か、棚スペースの都合が理由なんだろうか。ユーザー不在。もう少しなんとかならないものですか。<ヤマハ池袋店様
外出したついでにヤマハによって、間宮芳生氏の新刊「風のしるし・オッフェルトリウム(Wind Wrought / Offertorium)」(音楽之友社)の楽譜を発見。これは左手のためのピアノ曲。舘野泉氏のために書かれ、コンサートで演奏され、同名タイトルのCDに収録されるのも聴いて知っていたのだけど、まさか楽譜が出版されるとは思わなかった。左手だけの曲って、需要があまりなさそうな気がするから。それとも、左手レパートリーなら一も二もなく買ってくれる層が実は充実していたりするんだろうか。ちょっと考えにくい状況ではあるけど。とにもかくにも、企画会議で反対意見を押しのけて出版にこぎつけたであろう音楽之友社に拍手。で、こういうリスキーなことをやってくれる会社はなるべく応援せねばということで、僕も早速買ってきました。帰って来て早速左手で弾いてみるが、む、むずかしい・・・。しばらく弾いているうちに、左手だけで弾きこなすための指使いが少しわかってきたものの、ゆっくりしどろもどろで弾き通しただけで既に左手には腱鞘炎の気配・・・。急にハードな運動をしてはいけません。こういうのがカチッと弾けるとかっこいいんだろうなぁ。僕の技術では無理な話だけど。
グリーグに「2つの悲しい旋律」という弦楽合奏の曲があって、これはそこそこ演奏機会もあるようだ。この曲の出版を手伝う事になって少し調べてみたので、以下は覚え書きのためのメモ。「2つの悲しい旋律」はop34である。1曲目は「傷ついた心Den Sårede」、2曲目は「春Våren」。このop34はop33の「12の歌」から抜粋して編曲したもの。op33-3が「傷ついた心Den Sårede」で、op33-2が「春Våren」。ところが、この原曲「12の歌」の楽譜を調べようと思ったがなかなか見つからない。ネットで検索してみても、日本語でも英語でもめぼしい情報が見つからないといった状況だった。(検索の仕方が悪かったのかもしれない)。結果として某音大の図書館で発見できたので良かったが、普通に入手するのは結構難しいかもしれない。まず、おそらく確実な資料としてはグリーグ全集の中に入っている楽譜が適当だろう。個人で持つのは難しいかもしれないが、大学図書館などならおいてあるかもしれない。個人で楽譜を持ちたい時はShirmer社から出ていた(る?)Grieg Vocal AlbumのVol.IVを。「12の歌」がまるごと12曲入っているが、「12の歌」だとは書いていないので、そのつもりで見てみないと何の楽譜なのかわからない。op33-2「春Våren」だけならペータースの楽譜に収録されているものを使う方法もある。グリーグは自作の編曲をたくさん行ったようで、op34についてもピアノの編曲があるし、「春Våren」には混声合唱編曲もある。そして、それぞれのバージョンによって調性が違うのだ。何故わざわざ調を変えたのか、と考える事がそれぞれの編成の特徴をつかむきっかけの一つになるだろうし、中には音型が変わっている箇所すらある。こういうところを比較しながら眺めていると、編曲する際の引き出しを増やす事につながっていくだろう。ホルベア組曲の弦楽合奏版とピアノ版の比較なんかも昔やったなぁ。
バルトークの弦楽四重奏。全部で6曲。6曲合本になって1万円くらいで買えるスコアもあるんだけど、僕は運悪くその存在に気づく前に3番と4番のスコアを買ってしまった。こういう状態になってしまうと、残りをどう買いそろえていくか選択に困ってしまう。順当に1、2、5、6を買っていくとそれで1万円近くなってしまうし、合本を買って重複するのもなんだかなぁ。合本は持ち歩くと重そうだし。だいいちバルトークってそろそろ著作権切れだから、どこかの出版社で安く出てくるかもしれない。旧譜を買った直後に情報盛りだくさんの研究報告付き新譜なんて出ちゃったらどうしよう。・・・なんてことをつらつら考えだしてしまったので、結局買う機会を逸したまま長い時を過ごす事になってしまった。なんとなくバルトークに関しては、似た持ちスコア状況の人が多いような気がします。なんとなく。そんな我々に強い味方が現れました。Doverが1、2番を合本で出してくれたんです。1200円くらい。これなら買い!というわけで即注文。久々に1、2番を聞き返します。うーん、結構渋くていい曲ダッタノネ。こういうバルトークの顔もそういえばあったなぁ。うん、いい!!ついでに5、6番も聞き直してみたらやっぱりなかなかいい!これは5、6番のスコアも揃えなきゃいかんなぁ。でも現状で買うと5〜6000円するよなぁ。それなら6曲合本の1万円出して・・・、でもそれだと重いし・・・、でも5000円は・・・と、優柔不断なスコア収集はいつまでもループを繰り返すのです。
John Rutterの編集でOXFORD大学出版局から出ているEuropean Sacred Musicは、その名の通りヨーロッパの宗教音楽(合唱のみ)が俯瞰できるようになっているアンソロジー楽譜集です。古いところではジョスカンのAve Mariaくらいから、新しいところではプーランクSalve Regina、ストラヴィンスキーAve Mariaくらいまで入ってます。カザルスのO vos omnesなんてのまである。だいたいがアカペラで、フォーレのラシーヌ雅歌のように伴奏付きのものも含まれてます。結構広い時代を俯瞰しているんだから、時代順とか作曲年代順とか、テーマ別とかまとめてもよさそうなのに、純粋に作曲者アルファベット順のインデックスだけしかついていません。思い切りがいいというかなんと言うか・・・。ヤマハで見かけた時はたしか4000円近くしたと思うんだけど、amazonで1700円くらいなのをたまたま見つけたので買いました。こういう楽譜は資料として持っていたり、移動中に適当なページをめくって読譜すると楽しい。届いてからパラパラめくっていたら、グリーグのAve maris stellaが目にとまりました。この旋律、なんだか覚えがあるけど、この曲知らないはずだしなぁ、と考えてたら閃いた!「メリーさんの羊」に似てるんだ!そう思ったが最後、どのページにもメリーさんの羊が溢れかえっているようにしか見えてこなくなるから困ったもんです。ちょっとした「メリーさん幻想曲」といった赴き。高校生の時に「かたつむり」(♪でーんでんむーしむしかたつむり)でかなりドラマティックなアレンジを施したことまで思い出しました。グリーグの楽譜の方には「9世紀のVesper hymn」という書き込みがあります。メリーさんの方も、同じ旋律から派生して定着した歌なのかな?
Who is afraid of 20th Century Music? BOX20世紀音楽なんて怖くない、とでも訳せばいいのかな。現代音楽なんて、と置き換える方がもっと直感的でいいかも。作曲をやっている人の中にすら現代音楽聴かず嫌いで、現代音楽に対して「あんなヒュードロドロなものはイヤ」と言ってしまう人がいる。一部の前衛音楽はそう思われてしまうのかもしれないし、(演奏も含めて)質の低いもの、効果ばかりつなげたようなものは、たしかに聴いていて面白くない。でもそれは現代音楽に限った話じゃない。どんなジャンルでも一定数のクダラナイ、つまらないものは含まれているはず。で、このボックスは現代音楽聴かず嫌いな人に良いかもしれない。耳あたりのいい曲が並んでいるし、中には新鮮に聴けて楽しめる曲も見つかるだろう。これをきっかけにしてもっとコアな現代音楽を聴いてみたらどうだろう。逆に、現代音楽を聴き慣れた人にはモノ足りないかもしれない。けど、ショスタコーヴィッチのポルカを聴いて彼の技量にニヤッと驚き楽しむのもいいかもしれない。こういう企画を毎年、それもジルベスターコンサートで続けてきたMetzmacherに拍手というところ。(聴衆が実に嬉しそうに反応するのだ!!)演奏の水準は、残念ながら万全ではない。曲によってはオーケストラの機能的な限界が見えてしまう。でも、指揮者によってよく方向づけられた演奏なので不用意に場違いなパートが混入するようなことはきわめて少ない。僕の使い道はBGM。いろんなスタイルの曲がどんどん流れてくるし、気軽ではあっても一流の作曲家の曲ばかりで、軽さに裏打ちされた質の高さに心躍らされる。