お正月

音の年末(?)プレゼント。2003年に編曲した瀧廉太郎の「お正月」録音をYouTubeにアップしました。

クリスマス後の雰囲気を反映した無伴奏混声合唱用編曲です。「瀧廉太郎の6つの歌」の5曲目にあたります。

演奏は名島啓太指揮の混声合唱団鈴優会。

楽譜のお問い合わせはメールにてお願いします。(対応は年明け以降になってしまうので予めご了承下さい)

無伴奏混声合唱のための新作Phantasmagoriaが初演されます。
これはドイツ留学を経て書いた最初の合唱曲。そして歌詞は日本語ではなくドイツ語でもなく英語です。

タイトルのPhantasmagoriaは、辞書によると、

[1] (夢の中などで)次々に去来する幻影[幻想]; 次々と移り変わる光景
[2] 走馬灯
また、ヨーロッパで19世紀に流行していた降霊術のショーのことでもあります。

 

そして、あまり広くは知られていませんが、不思議の国のアリスを書いたあのLewis CarrollもPhantasmagoriaという詩集を書き残しています。

このキャロルの詩集の詩句にShakespeareやMathor Gooseの詩も織り交ぜ、さらにヘンリー8世の妻であったジェーン王妃の悲劇を伝説的に歌ったイギリスのバラード "The Death of Queen Jane" を音楽的素材の中心に据え、イギリス一色の原素材から生まれた曲です。そういう生まれなので、これまで僕が書いてきた合唱曲とは傾向の違う音楽をお楽しみいただけるかと思います。ご都合のつく方はお誘い合わせの上是非ご来場ください(私までご連絡頂ければ合唱団から頂いたチケットを差し上げられます)。

混声合唱団鈴優会 第20回定期演奏会

2010年12月19日(日) 14時開演  於:浜離宮朝日ホール
入場料:1800円(全席自由)

指揮:名島啓太
ピアノ:太田由美子
合唱:混声合唱団鈴優会

曲目:
W.A.Mozart: Tantum Ergo (KV 142 & KV 197)
堀内貴晃: Phantasmagoria (委嘱初演)
J.A.Pamintuan: Major caritas Op.5
ほか

帰国報告

10月末に卒業試験を終え(自作のみによるコンサート Kompositionsabendと口頭試験 mündliche Prüfung —僕はWebernのOp.6の3曲目と定量記譜法Mensuralnotationの関係をテーマに選びました—の2つあり、両方で最高点を頂きました)、 11月14日夜、無事に帰国しました。3年間の留学中にお世話になった皆様には心よりお礼申し上げます。

また日本での活動のスタートです。日本の皆さん、今後とも宜しくお願いいたします。

というわけで最新のプロフィールを。

 

堀内貴晃

作曲家。武蔵野音楽大学を卒業。東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を中退。ドイツ国立フライブルク音楽大学芸術家養成ディプロム課程を最優秀の成績で修了。オーケストラ・アンサンブル金沢設立10周年記念作曲登竜門オーディション最優秀賞、第15回朝日作曲賞(合唱組曲)などを受賞。平成19年度石川県芸術インターンシップ事業在外研修員。これまでに作曲を田辺恒弥、尾高淳忠、Cornelius Schwehr、Orm Finnendahlの各氏に師事。

近作に映画「眠る巴里」(ルネ・クレール)のための付随音楽(2台のコントラバスと4人のコントラバス奏者のための)、映画「アネミック・シネマ」(マルセル・デュシャン)のための音楽、野外劇「ロメオとジュリエット」(ドイツ・ロットヴァイル室内歌劇場とトロッシンゲン音楽大学による共同委嘱)のための音楽、 海の星(ファゴットとピアノのための)など。

堀内貴晃 プロフィール写真

留学中に得たあれこれの中には、自分のみならず他の人にとっても役立ちそうな事がたくさんあります。そうしたあれこれは、これからの活動の中でも触れていただく事が出来ると思いますし、このホームページでも書いていきたいと思います。

Zeit: am 21.10.2010 (Do.), um 18 Uhr (nicht um 20 Uhr!)
Ort:  Kammermusiksaal der Musikhochschule Freiburg
Eintritt: Kostenfrei!

21日の木曜日、18時よりフライブルク音大室内楽ホールで修了コンサートがあります。どれもここフライブルクで書いた作品。ご都合のつく方、是非ご来場下さい。(入場無料)

 

— Programm —

Eine Weise für Flöte, Klarinette und Bratsche
(2010, Uraufführung)

Anémic cinéma – Musik zum Film von Marcel Duchamp (2009)

Tempo di Bolero für Tonband (2010)

Seesternchen – Umi no Hoshi – eine kleine Nachtmusik
(unter Verwendung der Tonleiter einer südlichen Insel)
für Fagott und Klavier (2010, Uraufführung)

Paris qui dort – Livemusik zum Film von René Clair
für 2 Kontrabässe und 4 Spieler (2009)

# Die allen Stücke stammen in Freiburg

Es spielen:
Sonoko Asabuki (Bratsche), Alexander Grebtschenko (Klangregie), Takako Horiuchi (Flöte), Yao Liu (Klavier), Ayano Miyazato (Fagott), Shiho Uekawa (Klarinette), Antal Papp, Hyunsu Woo, Simon Hartmann, Changdae Kang (Kontrabass)
Alistair Zaldua (Leitung)

今度の火曜日19日に、新作の発表があります。

FilmMusik-Abendと題された一夜。火曜日19時30分からWiehreの旧駅舎を改造した映画館Kommunales Kinoにて。http://www.koki-freiburg.de/
入場は5ユーロ、割引が4ユーロです。

作曲科の学生が作った映像のための音楽作品が並びます。
僕は今回、テープ音楽(と今の時代でも言うのかなぁ?)を作りました。タイトルはTempo di Bolero(ボレロのテンポで)。長く迷った末にふと思いついたこのタイトルがとても気に入ってます。さりげなく曲のいろいろを本質的に説明できるタイ トル。曲はもちろんボレロを素材としていて、16分あります。

プログラムは
Carlos Cotallo Solares
Minkyu Kim
Irene Galindo Quero
Fredrik Wallberg
Takaaki Horiuchi : Tempo di Bolero
Carlo Thomsen
の順。各作品のタイトルはいま手元にありません。

ドイツ在住でご都合のつく方は、ぜひお越しください。

珍しくポスターのデータももらえたのでついでに載せておきます。グリッドデザインがダイレクトに使われているあたりがいかにもドイツらしく、機能的で、ダサい。これをフォーマットにして毎回文字を入れ替えるだけなんだけど、僕はいつも、70/80年代とか堀内誠一さんとかのデザインと同じ匂いを感 じ取ってしまいます。

FilmMusik 19. Januar 2010.pdf

 

合唱表現の第30号が発売されました。
拙作の「おしえて下さい」から第5曲「すじ雲」が掲載されています。1曲目の「一本のすじ雲」に見える動機が変形して現れて、この曲以降組曲はよりドラマティックに進行して8曲目の終曲「おしえて下さい」へと続いていきます。

従って連載もこれから佳境、というところだったのですが、残念なお知らせが。

季刊の雑誌として8年にわたって精力的に情報を発信してきた「合唱表現」誌は、この第30号をもって休刊する事となりました。近い将来の再始動を願っていますが、それまでの間は拙作の残り3作を読者の皆さんにお届けすることができません。
特にこの組曲は連載時の解説でも触れていたように、「まず終曲ありき」で終曲に音楽の中心があって、他の曲は終曲の要素をスピンオフさせる事で作曲したものです。ですから、このまま一番魅力的(だと作曲者が思っている)部分を知られずに終わってしまうのは残念。

と言うことで、いずれ別の発表の場を得られるまでの間、ご希望の方には直接楽譜をお届けしたいと思います。ご希望の方は、「おしえて下さい」の楽譜希望と件名に記して、私までメールをお送りください。

既にプレミエが終わってしまいましたが、7月12日から8月16日までの間、ロットヴァイル室内劇場というところで上演されている野外劇「ロミオとジュリエット」の音楽を担当させていただいています。打楽器奏者二人のために書き下ろした音楽です。上演時間は2時間15分くらいでしょうか。

劇場のホームページ担当者がなかなか更新してくれないので、作品紹介のところにはクレジットがまだ載っていませんが、画面左のEnsembleというところをクリックしてもらえばTakaaki Horiuchiと載っているのをご覧頂けるでしょう。
http://www.zimmertheater-rottweil.de/

Rottweilというのはドイツ南西にある街。トロッシンゲンとシュトゥットゥガルトの間に位置する街で、フライブルクからだと電車で2時間〜2時間半くらいのところにあります。
小さな街だけど、とてもきれいな、観光に行くにもオススメの街です。
野外劇の舞台となっているのは、本来の劇場から少しだけ離れたところにある、見晴らしの良い丘の切れ目。鳥の歌声が豊かで、上演中に次第に夜のとばりが訪れる様は何とも言えず幻想的です。

ドイツ在住の方や、たまたま旅行でドイツを訪れる方は是非お運び下さい。8月16日までに22公演が予定されています。

公演日程はこちらでご確認いただけます。(いくつか移動公演もあるので注意です!)

ドイツ語ですがレビューも出ています。
http://www.nrwz.de/nrwz/theater/00027850

ところで、日本では「ロミオとジュリエット」として親しまれているシェークスピアのこの劇、ドイツでは”Romeo und Julia”と呼ばれています。ロメオとユリア。
ロミオ→ロメオくらいの変換は問題ないんですが、ジュリエット→ユリアの変換は、かなり受け入れるのに時間がかかりました。実際に作曲して、最後の集中稽古が始まった頃になってようやく自然と”Julia”が腑に落ちるようになって、初演が終わった今は逆に「日本語では何だっけ?」と1秒ほど思考が止まってしまいます。

18日土曜日18時からベルリンで新作の上演があります。Blind Spot – Klang in Film und Videoというイヴェントの一環。

僕はマルセル・デュシャンが1926年に撮った無声映画Anémic cinémaのためにサイン波だけを使って作曲しました。

会場は、Charlottenstraße 55にあるハンス・アイスラー音大のスタジオホール。入場料は4ユーロです。

詳細は、Klang-Film-Video-Festival „Blind Spot“から、Samstag, den 18. Juli 2009, 18.00 Uhrとなっているところをクリックして下さい。他の作品情報も出ています。

ニューヨークフィルのサイト。マゼールと録音した全集をダウンロード購入できるようになりました、という特別サイトなんだけど、(僕にとっては)音源よりさらに魅力的なコンテンツがありました。ページ上の右側にある薄汚れた肌色の画像をクリックしてみて下さい。Follow along in Mahler’s personally notated score as you listen to Mahler’s First.と書いてあるところ。ちょうど100年前の1909年12月16日と17日に、マーラー自身がニューヨークフィルを振って交響曲1番のアメリカ初演をしているんだけど、この楽譜はその時にマーラー自身が指揮のために使用した楽譜なんだそうです。じっくり読んだわけじゃありませんが、ざっと駆け足で全ページをめくってみたところ、書き込みは、指揮者がごく自然に楽譜を読む時のような、指揮するための覚え書きのような書き込みが殆どで、「振る時は指揮者として楽譜を読んでいたんだなぁ」という当たり前の事に改めて気づきます。この楽譜から「作曲者の自作自演」という事をかぎ取ろうとするなら、書き込みがむしろ少なめで端的である、という事実がそれを物語っていると言えなくもないのでは、というくらいでしょうか。一部では音符の書き換えも見られます。例えば35ページではファゴットの1、2番が書き換えられていますね。ただし、この程度なら当時の演奏習慣ではそれほど珍しくないだろうから、まだ作曲者ならではの痕跡と言うには弱い。この程度の小変更は他にも散見できます。作曲者ならではの書き込みだと言えそうなのは130ページでの2小節カット140ページでの小節ごとアクセント145-146ページでの結構大胆な音量変化この3カ所が特に目立つんじゃないかと思います。もちろんじっくり見て検討していけば他にも興味深い点がたくさん出てくるでしょう。楽譜と見比べて、ニューヨークフィル関連の音源聞き比べをしたらかなり楽しめそうですね。

マーラーのアダージェット(交響曲第5番4楽章)が日本楽譜出版社より出版されました。
http://nihongakufu.com/score/archives/5_4_1.php

交響曲のアダージェット楽章のみが収録されているこの楽譜ですが、僕は、原曲のハープ+弦楽版と一緒に収録されているピアノ編曲を担当しています。

弦楽器特有の息のなが〜い旋律をどうやってピアノで処理するかが課題でしたが、なんとか原曲の雰囲気を保ちつつ、なおかつピアニスティックな効果も併せ持つ編曲に出来たんじゃないかと思います。
それほどピアノが弾けない人でも楽しみで弾ける編曲であり、かつ、ちゃんと弾ける人が表情を施して弾けばステージにもかけられるような編曲であるように、と難易度を考えてあります。

マーラーの5番のスコアを既に持っている人はよくご存じと思いますが、交響曲5番全体はものすごい分量があるんですよね。だから既存の版は、減らせるものなら1ページでも少なくして印刷経費を抑えようという出版社&浄書家の執念すら感じさせるレイアウトになっています。利用者としては、楽譜を持ち歩きやすいというメリットもあるんですが、この第4楽章などはそのあおりを食らって、11分くらいはかかる曲なのに、たった5ページに、これ以上は出来ませんってくらい神経質に、縦にも横にもスペースを切り詰めて収められています。浄書をやっている目から見ればほれぼれするくらいの職人技が詰め込まれているんですが、この曲を勉強しようとしたときは、読譜のための苦労もかなり追加しなくてはいけなかったわけです。
曲はアダージェットなのに、楽譜は真っ黒でゆとりのない状態だから、目と耳がダイレクトにはつながってくれないんですね。

対するこの日譜版は、楽章抜粋のおかげでレイアウトもゆったりと、目に優しい楽譜になっています。
アダージェットだけ楽譜を読んでみたい、なんて人にはまさにうってつけでしょう。ピアノ版の方も、ぜひ弾いてみてください。

大型書店、楽器店などのほか、日本楽譜出版社さんからも直接購入可能です。

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