第73回日本音楽コンクール 受賞者発表演奏会に行ってきました。東京オペラシティ コンサートホール 18:30開演。今回の作曲部門の宮沢一人さんが兄弟子にあたる縁で聞きに行きました。面白かったぁ。宮沢さんの曲については、(知っているだけに客観的な評価ができないので)詳しくは書きません。でも「オーケストラ奏者の充実感を引き出す」という点において、何よりも成功しているように思うし、その意味で作曲のコンクールにおいては収穫と言える曲だったのではないか。宮沢さんの曲を目的に出かけたので、会場でプログラムを見て驚いた。二人目の声楽の優勝者バーバーの「ノックスヴィルの夏-1915年」を選曲していたから。この曲、大好きな曲なのにどうしてか日本では殆ど演奏されていない。調べた範囲では過去のPMFで1度演奏されたことがあるだけ。今度5月に演奏されるのはチェックしていたんだけど、図らずも今日、一足先に生演奏を聴ける事になって、バーバーお得意の感傷の世界にひたることができた。この曲は、テキストの状況を歌以外の背景でとても適切に表現しているように思う。それが演奏でもうまく引き出されていた。テキストをいかに音そのもので描いていくか、というのは僕にとってひとつの課題。そのあとのフルート二人も秀逸な演奏。特に男の子の方は今後が楽しみ。けれど、(演奏会運営上の都合もあるのだろうけど)両者とも楽章カットの状態でしか聴けなかったのが実に残念。受賞者のお披露目コンサートであるなら、その演奏家の色んな側面が見たい(聴きたい)というのが人情ではないか。終演が遅くなっても構わない、カットなしで聴きたかった。そして今日の最大の収穫は指揮の高関さん。ソリストやリハ時間などで制約が多かったであろうこのコンサート。細かい事故(曲を知らなければわからないであろうレベルの)が相当多く起こっていたにも関わらず、瞬時に対処して素早く適切な処理をしていた。指揮のウラワザ(多分)の引き出しを10個や20個は見る事ができたわけで、こんなのは普通の充分な準備を重ねたプロのコンサートでは見る事はできない。それを見れただけでも価値のあるコンサートだったと思う。やっぱりプロってのは引き出しを多く持っているものなんですね。面白かった!
You are currently browsing takaaki’s articles.
日曜午前に作曲の打ち合わせがあったため、金沢に行ってきました。土曜の夜行バス(23:30東京駅発)に乗って翌朝8:30金沢駅着。実家に30分だけ帰省して10時からホテルで打ち合わせ。打ち合わせの後そのままホテルにこもって仕事を進めて(ノートパソコン持ち込み)ホテルに宿泊、翌日午後の飛行機で東京に帰る、というプランです。行きの夜行バスとホテル1泊、帰りの飛行機のセットで15,000円のツアーがあるんだから、今は帰省も気軽になってきました。片道航空券よりも安いんだから。さてさて、作曲の打ち合わせも無事終了して、翌日の午前中が空いたので、実に10年ぶりくらい?で地元で人気のカレー屋さんに行ってきました。そのカレー屋さんは今は「チャンピオンカレー」と言いますが、10年くらい前までは「ターバンカレー」と名乗っていました。でも、暖簾分けした後発店が「ターバンカレー」が先に商標登録を取ってしまったらしく、裁判の結果新しくチャンピオンカレー(チャンカレ、と略すらしい)の看板を掲げる事になったそうです。飲食業界にも熾烈な争いはあるんですね。フクザツなオトナの事情があるようですが、ずっと東京にいた僕には把握しきれないので、正確な情報はお近くの金沢人に訪ねてください。そんなこんなの事情があるので、僕は「チャンピオンカレー」と聞いてもピンときません。まだ「旧ターバンカレー」と呼んだ方がしっくりくる。その「旧ターバンカレー」に久々に行ってLカツカレー(定番&人気メニュー)を食べてきました。子供の頃はこれをよく食べたなぁ。金沢工大前店(本店?)に月に何度も通っていたような気がします。「おいしい料理」は大人になってみれば他でたくさん食べました。でも、「おいしくて満腹で満足な料理」はターバンの他には思い当たらないなぁ。カレーなんてどこで食べてもそう変わらないだろ?と思うそこのあなた、違うんです。一度ターバンのを食べてみてください。なんと言うか、ご飯との絡み付き方が違って、ルーとご飯が一体になってるんです。それはドライカレーじゃないのか?というそこのあなた、それも違うんです。ドライカレーのパサパサ感とは違う深みが、ターバンカレーにはあります。あの中毒的な味は他で食べた事が無いので、ちょっと説明できないなぁ。興味がある人には是非食べてみてほしい味です。まず食べ盛りの学生さん(特に♂)の熱狂的な支持は間違いないでしょう。僕としては、いいものを食べ慣れたグルメの舌にどう響くのが知りたいところです。それだけ思い入れのある旧ターバン(チャンピオン)カレー。東京でも食べたいと思っている金沢出身者は多いはず、と思って調べてみると、ありました。東京で旧ターバンカレーを食べられるお店が。それは秋葉原にあるcure maid cafe!!ん?メイドカフェ?・・・何故かメイド喫茶のメニューの中にチャンピオンカレーが入っているのです。無駄に敷居が高い(^^;;) でも、ご安心を。チャンピオンカレーさんが通販をしていました。メイド喫茶に一人でフラッと入る勇気もなく、ましてや人を誘って一緒に入る勇気もない僕のような人でもいつでも食べる事ができます。たしかに冷凍パックは若干味わいが落ちるのは否めませんが、それでも充分中毒的においしいです。僕は今回、実店舗から冷凍1kgパックを4つ買って持ち帰ってきました。保冷パックで買う事もできます。
携帯に見知らぬ番号(080ナンバー)から電話。知らない電話でもとりあえず出なくちゃいけないのが自由業の悲しいところです。出ると、若い男の声(営業向きの誠実そうなテナー)で「ヤジマコウギョウの○○(名前は聞き取りそびれた)ですけど、この携帯電話で無料サイトをご利用になった方に利用代金の請求を」云々と一気にまくしたててきた。勿論僕に記憶はないので「ちょっと今記憶に無いのですが」と言ったら「今記憶が無いってどういうことですか!?」と何故かいきなりキツく問いただされた。「いや、突然言われて心当たりが無かったので、詳しく教えてください」と言うと「あのですね、こちらの携帯から昨年の2月○日○時○分○○秒に△△というサイトにケンタという名前で書き込みをしているんですよ。」という。「この携帯からですか?」「そうです」僕は年末に携帯を乗り換えたので1年前にこの携帯からアクセスできようはずがない。「この携帯は去年の12月に契約したばかりなんで2月にアクセスできるはずがないんですよね」と言い終わる前に向こうが突然電話を切った。ほんの10分前の出来事。詐欺目的の電話だろう。他にも同様の電話がかかってくる人がいるかもしれないので、注意を促す意味でも書いておきました。・「無料サイト」と言っておきながら利用料金の請求・ちゃんとした企業なら固定電話から電話してくるんじゃないのか?・不必要に早口などなどおかしいポイントはさまざまあります。考える暇を与えないのが詐欺のポイントなのかもしれないけど、電話を切ってから少し冷静に考えればわかりそう。仮に僕が携帯を乗り換えていなかったとしても騙される事はなかったでしょう。できれば相手の番号を晒してみたいけど、ここで晒したらマズイかなぁ。こういうのはどこに通報すればいいんだろう?
どうも風邪をひいてしまったらしい。こまごましたようで外出が多かったからどこかで貰ってしまったかな。舌(特に先端)が痺れて、腹部に鈍い痛み。そして時々扁桃腺に瞬間的な刺すような痛み。扁桃腺の痛みはこれまで経験した事の無いタイプの痛みだ。大丈夫かなぁ、でも、寝込むほどではないしある程度動く事は充分可能。ただ、充分に元気というわけでもない。今日は作曲を進めたかったんだけど、作り始めてみてもどうにも頭が回転しなかったので予定変更。ずっと懸案だった自作の音源の整理をすることにしました。事務的な事ならどうにかなるもんね。多分。今までに演奏されたときの音源は大部分がMDに入ってます。あとはCDに入っている録音も少し。問題なのはMDの方で、普段殆ど使っていないポータブルのハードを持っているだけ。時々「選曲の参考に音源を聴かせてください」なんて問い合わせが入ったときに、わざわざオーディオ周りの配線をやり直してMDからテープに落として、そのテープから再び別のMDにダビングし直す、なんて作業をしていたんです。今までは。この上なく非効率なのはわかっているんだけど、そういうシステムしかないんだからしょうがない。そんなわけで、これまでは音源の問い合わせがある度に憂鬱になってました。一度パソコンに取り込めばいいのはわかっていたけど、僕が今使っているMacにはオーディオ入力する端子がない。数日前、やっとUSBのオーディオインターフェースを買ってきたのでパソコンにMDの音源を取り込めるようになったんです。1万円は痛い出費だった・・・。2〜3千円であっても良さそうなのになぁ。で、今日は図らずも事務作業の一日になったので、順番に過去の音源を取り込んでいきました。取り込んだ後は波形編集のソフトで頭と終わりの無音部分をカットして(エフェクト効果をどうこうするほどの思い入れは無い)、編集し終わったファイルは順番にiTuensに投げ込んでいって演奏者のクレジットを加える。問い合わせの大部分は合唱なので、とりあえず合唱曲の整理だけはひととおり終わりました。これからは問い合わせに応じてトラックを選んで、ボタン一つでCDを焼いて送る事ができるぞ。ビバ、iTunes!作曲家によっては自分の曲を聴くのが大好きな人もいるのかもしれませんが、僕は自分の曲を聴くのは嫌いです。いろいろ気になって身につまされてしまうから。作曲しているその瞬間は「おお〜すげ〜カッコイイ!」とか無理にでも信じて書くように心がけてますが(ある種のカンチガイも必要でしょう)、書き終わってしまえば後悔と慚愧の念に苛まれます。で、「もしこんな曲を最後にして死んじゃったら大変だ」なんて思うので次の曲にかかれるわけです。もっと筆の力があればそんな事を考えなくなってくるのかもしれませんが。これでも10年くらいは作曲しているので、全部の音源整理にはまだしばらくかかりそう。
矢沢宰をテクストにして作曲している。少し前まではどうも距離を感じてしまって入り込めなかったけど、今日になってやっと自然に詩が入ってくるようになった。何度も詩集全体を読み返しながら少しずつ音を書き留めている(あとから取捨選択してまとめるつもり)のだけど、その作業中に何度も込み上げるものが溢れ出そうになって困る。なんと純粋な詩なんだろう。これほど無垢な憧れ、願いを持った言葉を音楽によって地に貶めてしまってはいけないと思う。この純粋をそのまま変質させずに伝えるような音楽を書いてみたい。それを書けるのは、今をおいて他に無いという気はしている。それが確信なのか勘違いなのかは、出来上がってみなければわからないけど。
作曲している合間にちょっと一息、という時には、棚から適当に楽譜を引っ張りだして、開いたページの曲を弾いてみたりしている。今日は久々に思い立ってラヴェルのクープランの墓(ピアノ)を出してきた。昼間にヴィラ・ロボスのピアノパートを聴いて、クープランの墓のプレリュードのペダルのことを思い出したからだ。クープランの墓をちゃんと見直したのは2年ぶりくらいだろうか?前は覚えるくらいまで弾いていたけど、今見るととても新鮮に見える。と同時に、前は何にも聴かずに弾いていたんだなぁとも思う。歪められた和音で全部のピッチを聴き取ってはいなかったようで、あれ、こんな音前弾いていたっけ、と思うところもところどころあった。指は無意識にその音に行くからたしかにそう弾いていたはずなんだけどな。内声が耳に新しく聴こえてしまう。それから持続。前はいかに縦の和音の中でばかり音楽を聴いていたのか。こんな横のつながりが隠されていたのかぁと驚いてしまった。そういえばオーケストラ版ではそういうポイントを拾っていたなぁ。そういうラヴェルのワザの部分には驚きを新たにしたが、不思議なことに純粋に音楽的な感動を感じなかった。前はあんなにラヴェルが好きだったのにな。今はドビュッシーの音楽の方が肌に合っているようのかもしれない。
今日はあるピアノトリオに頼まれて東長崎でレッスン(もどき)。お題はヴィラ・ロボスのピアノ三重奏曲 第1番。少なくとも日本ではほとんど演奏されていないらしい。それを演奏するので見てほしいという事で行ってきました。と言っても、ヴィラ・ロボスの全貌については僕も全然詳しくない。思い出してもブラジル風バッハとショーロス、ピアノ協奏曲をそれぞれいくつか聴いた事がある程度。あ、赤ちゃんの家族は何故か国内版の楽譜も出ているから昔見たなぁ。…という程度なので、純粋に楽譜から読み取っていく以外のことはできないのだけど、この楽譜が実にミスの多い楽譜で「この音はフラットかナチュラルか?」という疑問多数。もう少し校正してから出版してほしいけど、細かい事にこだわるよりも次の曲、という感じの人だったのかなぁ。今日は時間がなくて1楽章だけしか聴けなかったけど、なかなか面白い曲です。5小節のごくごく短い序奏がついているんだけど、この5小節が(単なるユニゾンなのに)とても素晴らしいアイディア。こういう切り口で曲を始めることもできるんだなぁ。その後は高密度のテクスチュアあり、急にフランス風になったり古典派みたいな動機があったり、ピアソラばりのコーダがついてきたりと、盛りだくさんな内容。ちょっと盛り込み過ぎの感がないではないけど(だから演奏のまとめ方が難しい)、残りの楽章で消化されているのかな。どこも再利用できそうな魅力にあふれてます。切れば血が吹き出るような熱気。練習が終わったときには曲と演奏のおかげで却って元気になってました。あまり店頭で見かけないので、最後にヴィラ・ロボス情報。去年の10月に国内書で初めての?ヴィラ・ロボス本が出版されています。版元はトランスビュー。日本ヴィラ・ロボス協会というのもあるんですね。リンクが見つからないので、現在はホームページがないのかもしれない。残念
Who is afraid of 20th Century Music? BOX20世紀音楽なんて怖くない、とでも訳せばいいのかな。現代音楽なんて、と置き換える方がもっと直感的でいいかも。作曲をやっている人の中にすら現代音楽聴かず嫌いで、現代音楽に対して「あんなヒュードロドロなものはイヤ」と言ってしまう人がいる。一部の前衛音楽はそう思われてしまうのかもしれないし、(演奏も含めて)質の低いもの、効果ばかりつなげたようなものは、たしかに聴いていて面白くない。でもそれは現代音楽に限った話じゃない。どんなジャンルでも一定数のクダラナイ、つまらないものは含まれているはず。で、このボックスは現代音楽聴かず嫌いな人に良いかもしれない。耳あたりのいい曲が並んでいるし、中には新鮮に聴けて楽しめる曲も見つかるだろう。これをきっかけにしてもっとコアな現代音楽を聴いてみたらどうだろう。逆に、現代音楽を聴き慣れた人にはモノ足りないかもしれない。けど、ショスタコーヴィッチのポルカを聴いて彼の技量にニヤッと驚き楽しむのもいいかもしれない。こういう企画を毎年、それもジルベスターコンサートで続けてきたMetzmacherに拍手というところ。(聴衆が実に嬉しそうに反応するのだ!!)演奏の水準は、残念ながら万全ではない。曲によってはオーケストラの機能的な限界が見えてしまう。でも、指揮者によってよく方向づけられた演奏なので不用意に場違いなパートが混入するようなことはきわめて少ない。僕の使い道はBGM。いろんなスタイルの曲がどんどん流れてくるし、気軽ではあっても一流の作曲家の曲ばかりで、軽さに裏打ちされた質の高さに心躍らされる。
合唱連盟の機関誌「ハーモニー」のための解説原稿ようやく完成。完成を急がなかったのもあるけど、足掛け一ヶ月か。結構慎重。初稿をまとめてから、何人かの知り合いに原稿を送ってコメントを頂いて、それを反映させて改稿。さらにしばらく熟成醗酵させてから手直しを数度。という、まことに手間のかかる事を進めていました。それだけ手間をかけたところで、基本的な文章力がある訳じゃないのでいいものが書けたという気はしない。また一方では、基本的な文章力がある訳じゃないのでせめて手間をかけてチェックは厳重に、という気持ちもあります。まぁ現時点、現状の中での最善という事。今回の原稿には原稿料が出ます。「作曲料」「編曲料」というのはそれなりに貰う機会も増えてきたけど、文章に対して「原稿料」なるものを頂く機会は非常に少ないので未だに違和感あり。
神戸愉樹美ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団のホームページが最近できたのでお知らせ。現代モノのコンサートに行くと、この団体の新作初演コンサートのチラシが折り込まれたりしているので存在は何年か前から知っていました。手書きで味のある、中央線文化の香り漂うデザインに統一されたインパクトあるものなので、パッと見て「あ、いつもの団体だ!」とわかるように工夫されています。どなたが書いていらっしゃるのかな、チラシだけでも愛着を持てるなんて、他ではなかなか見かけません。コンサートに行けたのは今までで一度だけ。去年の11月。でも、その一回ですっかり魅了されました。クラシックの弦楽四重奏とは全然違う響き。明るくて伸びやかで、清らかな音。「物足りない」という種類のものではなく、全く違う表現領域を持ちうるだけの、別個の世界が確立できそうな魅力的な響きの合奏でした。そしてコンサート後に彼女たちのCD"Buffet delle Quattro Viole da Gamba"を購入。つまみ食いのようにいろんなスタイルの曲が楽しめて、ヴィオラ・ダ・ガンバの様々な魅力が垣間見えます。この中では佐藤容子さんという方(僕は全然存じ上げない名前だった)の曲が一番新鮮な発見。楽器や編成の魅力を自然に引き出していてとても心地よいです。こういう泰然自若とした曲を書ける人って男性作曲家では思いつかないなぁ。女性ならではの姿勢が反映されているような気がします。他の曲では、ルネサンスや古い時代のものが秀逸。このCD、これまでに結構な回数繰り返して聴いています。作曲の人向けにはヴィオラ・ダ・ガンバ 作曲家のための手引書という冊子がオススメ。具体的に楽器の奏法上の基本から可能性までが書かれています。通常の管弦楽法の書籍がカバーしていない楽器については、こういう「奏者の側からの手引き」というのはありがたい存在ですね。