作曲。急がなくてはいけないが、五線紙がなくては話にならない。切れた五線紙を買いに、午後は池袋のヤマハに。行ってみたら、売れなかった楽譜のセールをやっていた。ガサゴソさがしていたら急に「こんにちは」と声をかけられた。振り返ってみたら、大学時代の同級生のピアニストO石君だった。会うのは何年ぶりだろう。3年くらいは経っちゃってるかもしれない。でも、元気そうで良かった。軽く近況報告をしあって別れた。別れたあとに、さらにワゴンをがさごそやって、ストラヴィンスキーのThreniとIntroitusのミニチュアスコアを発見。半額だったので両方購入。定価だと手が出しにくい曲だからなぁ。他に、ミヨーのスコアでおもしろそうなのも見つけたけど、こちらは半額になってもまだ割高感があるので手を出さなかった。
過ぎた話ではあるけれど、9月5日、6日に行われた「はこね学生音楽祭」について、僕の中で大切な経験になりそうなので書き残してみる。この音楽祭が生まれたのは4年前。1位賞金100万円!という太っ腹な学生対象の音楽祭が生まれた事を、たしかどこかのホームページで知ったと思う。合唱をやっている大学生を対象にしたものだ。世の中にはお金があるんだなぁと思っていたところに、東大の合唱団で指揮を振っていた友人のY野君から声がかかった。「コンクールに出るから課題曲の箱根八里をアレンジして欲しい」と。そう、この音楽祭の最大の特徴は、課題曲が箱根八里であること、ただしアレンジは自由、というところにあった。編曲を試みたことのある人から身に染みてわかるだろうが、箱根八里はひたすらトニック。稀にドミナント。ほとんど和声的に変化しない旋律が、これでもか!とばかりに並列されているばかり。誤解を恐れずに書くなら、この曲が名曲だなんてとんでもない!駄曲だ。瀧廉太郎だって他にいい曲がたくさんある。これで、課題曲が例えば「荒城の月」であったり、「花」であったらこの音楽祭の実情も現在はもっと変わったものになっただろう。しかし、「はこね学生音楽祭」である以上、最大のご当地ソングである課題曲を変えるわけにはいかない事情もよくわかる。この辺の事情を知るためには、それぞれの曲の合唱出版譜を調べてみればわかるだろう。箱根八里は、僕の知る限り信長貴富氏によるアカペラ(女声、男声・混声)のアレンジと、林光氏によるピアノ伴奏アレンジの2種類しか出ていない。他に出ていたとしても、愛唱曲集の中に独創性のない、通常の和声付けの楽譜が混ざっている程度だろう。曲の知名度から考えてもあまりに選択肢が狭いのは、編曲の事情が絡んでいるとしか思えない。聴き映えするような編曲しにくいもん。僕も、当初はそんな印象しか持てなかったから、和声のソプラノ課題を解くが如くに向き合って、和声的な味付けを変える程度にしか工夫を凝らせずに編曲を終わった。この時点では、根本的な発想転換をして独創的なアレンジ、などとは考えられなかった。あとで報告を聞いたら、アレンジのパンチがイマイチ弱かったらしい。けど、箱根八里で原曲に忠実なアレンジやったってそもそもそんなもんだよ、と反発を感じた記憶がある。ピアノ伴奏ならね、まだ伴奏でごまかしていけるけど、アカペラだと通常の和声付けで発想している限り限界がある。結果は予選落ち。2年目にもう一度この音楽祭にチャレンジしたい、ということで「とにかく数多くの箱根八里に負けないインパクトのあるアレンジを」と、懲りずにY野君は再び委嘱をしてくれた。「そうは言ってもあんまり原曲から離れちゃ変だよ」という彼女の至極真っ当なアドバイスを半ば無視して、「箱根八里パラフレーズ」路線で再度編曲に挑戦。無駄に長いなら要らない部分を使わなければいい。あとは動機の展開のように楽想を展開すれば。そうやって殆ど新たに作曲したかのような箱根八里が生まれた。相当演奏の難しい(ように一見思える)楽譜だ。中には連続五度とかをふんだんに仕込んであるので、実際には、聞こえる派手さ程には難しくない。ただ、曲を充分に歌いこなすには至れなかったようで、この時も予選落ち。3度目の正直。今度こそ、ということでこの時から指揮を頼まれた。去年のアレンジで、より高い演奏水準で。ただ、基本的な指揮法を習ったとは言え、僕には殆ど指揮経験はない。見よう見まね。自由曲には派手さはないが着実な名曲を持ってきて、ひたすら純正調でハーモニーを作る練習。そして楽譜から自然な表現を引き出す練習。それなりに基礎作りの意味はあったろうか、東大生たちには本当の意味でハモるということの入り口は見せてあげられたかな。ただ、攻めていく派手さは作らなかったので、この年はようやく予選突破したところで結果が落ち着いた。この音楽祭のあとに、同じく瀧廉太郎の歌曲に、箱根八里と同じような発想で新たに息を吹き込んだ「瀧廉太郎の6つの歌」という編曲集が生まれた。鈴優会の委嘱だが、葉っぱ会の委嘱した箱根八里の存在抜きには語れない。そして今年。再び指揮の依頼。また僕に頼まれたということは、今度こそ1番を取らなければ意味がない。僕だって去年よりは指導経験も増えて、より的確な指導や練習ペースの配分を身につけている。自由曲の選曲を、「瀧廉太郎」一色で統一する事にした。ただし、勝ちに行くためにアクロバティックなアレンジを中心に。本選の最後に歌うために、毛色を変えたシェーファーのガムランも据える事にした。けっこう攻撃的な布陣。ところがふたをあけてみたら充分な練習回数が確保できない。効率優先で練習しないといけないため、無駄な繰り返し練習を最小限にとどめられるように、練習プラン、指示の共有を前提に置いて乗り越えた。時間がない時にでもある程度以上に仕上げてしまうのは東大生の持っている重要な武器と言える。結局時間が足りなくて、二日目に歌うガムランの仕上げ練習は初日の夜にはじめて行うと言う有様。だけど、それが功を奏して、本番に至るまでモチベーションを高め続けながら演奏する事が出来た。僕が去年より成長したのは、各部各部の表現を聞かせる事よりも、より全体の構造の中でベクトルを打ち出せるようになった事。これができると聞いている人に安定感をもたらす事が出来る。優れた指揮者というのは特にこういう部分が優れた人の事なのではないだろうか。今回は歌い手の成長もあって、いろんなことがうまくはまってめでたく100万円を手に出来た。1年目から依頼し続けてくれている東大の学生たちの4年にわたる成長あってのものだろう。学生の団体はどこでもそうだろうが、毎年顔ぶれが入れ替わる中で水準を保ち続けたり、上げて行くのはとても難しい。他の出場団体を見ていても、昨年からわずか1年で急成長を見せた横浜の大学生、京都の大学生がいるかと思えば、去年の輝きが嘘のように消え去っていた東京の大学生がいたりして、諸行無常、驕れるものは久しからずを目の当たりした。水準の維持・成長って本当に難しい。他の団体はさておき、4年かけて東大のみんなと一緒に成長して来れたことはとても嬉しいし、その結果が具体的な評価となって表れたということは、各人の誇りとしてこれからも生き続けるだろう。打ち上げの酒のおいしかった事。作曲のような個人作業をやっているとなかなかわからないものだが、仲間と成果を確認しあえる充実感はこれほどだったか。ひとつの曲に4年付き合うと言う、貴重な経験をさせてくれたメンバーたちと、はこね学生音楽祭に感謝!
練馬のBOOK OFFで『ある「完全な音楽家」の肖像』を発見。アンリエット・ピュイグ=ロジェの記録。気になっていたけど買うのを躊躇していた。500円で美本なら躊躇する理由はない。彼女の存在を知ったのは没後しばらく経ってから。現在活躍中の人の経歴に彼女の名前を見かける度に、彼女の大きさが思われる。今からでも学べるものは学んでみたい。同じ棚で十二音による対位法も見かけた。これも500円。完全に新品同様。持っているので買わなかったけど、もとの持ち主が何の目的でこれを買って、手放したのか気になる。作曲をやっているか興味のある人だろうけど、それなら少しは勉強してみてから手放してみても良さそうなもの。興味ないのにうっかり買う本ではないもんなぁ。練馬のBOOK OFFで『ある「完全な音楽家」の肖像』を発見。アンリエット・ピュイグ=ロジェの記録。気になっていたけど買うのを躊躇していた。500円で美本なら躊躇する理由はない。彼女の存在を知ったのは没後しばらく経ってから。現在活躍中の人の経歴に彼女の名前を見かける度に、彼女の大きさが思われる。今からでも学べるものは学んでみたい。同じ棚で十二音による対位法も見かけた。これも500円。完全に新品同様。持っているので買わなかったけど、もとの持ち主が何の目的でこれを買って、手放したのか気になる。作曲をやっているか興味のある人だろうけど、それなら少しは勉強してみてから手放してみても良さそうなもの。興味ないのにうっかり買う本ではないもんなぁ。
全日本合唱連盟の機関誌「ハーモニー」に頼まれた原稿を仕上げてメール送付。朝日作曲賞の受賞コメントを800字で、という話だったけど、800字も「今まで生きてきた中で一番嬉しいです」「頑張った自分を褒めてやりたい」「気持ちいい。チョー気持ちいい。」では埋められないので、応募しない人にはなかなか伺い知れない、審査結果が出るまでの応募者のココロモチというやつを書いて逃れてみた。どうしよう、ボツられたら。作曲も得意とは言えないけど、文章を書くとなると尚更苦手です。いつもいつも、書き出しはどうしようか、思いつくまで四苦八苦。思いついても暗中模索。書き上げたら疑心暗鬼。いくら努力したところで名文なんて生まれようもないのにね。
午前中は「葉っぱ会」の練習@東大駒場キャンパス。ひととおり音とりが終わった状態だったので、練習では早速音楽の造型の彫り込みを始めたけれど、いかんせん欠席が多く成果は不十分。残りの練習時間も充分とは言えない状況なので本番までに無事に仕上げられるかちょっと心配。出席していた人たちには何の責任もないわけで、申し訳なく思う。
今日の午前中は名島啓太先生のオフィスにお邪魔して打ち合わせ。12月初演の鈴優会団歌のテキストについて。どんなイメージの歌がいいか、キーワードになるような言葉を集めておいてください、とお願いしてあったのだけど(人生初の作詞を覚悟していた)、学生指揮者の方が殆どまとまったテキストを書いてくださっていたので、それをもとにブラッシュアップするだけの作業で済みました。これからは出来たテキストをもとに作曲作業に入っていきます。午後は自宅に帰ってきて作曲。昨日の続き。まだスカッと抜けるようなアイディアが出てこない。
運良く疲れが残らなかったので元気に作曲。今書いている楽章のクライマックスは見えてきたんだけど、まだ前半の流れが定まらない。うまい具合にこちらの世界に引き込むような導入を設定したいけど、イマイチなアイディアばかり出てくる。こう、喉のところまで出かかっているような実感はあるんだけどね。久しぶりに演奏スケジュールを更新しました。今年の秋は演奏機会が少し増えます。まだ確認取ってないので名前は出しませんが、全日本合唱コンクールの東京支部でも作品を演奏してくれる団体があります。8月の後半から9月頭にかけてはニワカシキシャになって練習にいそしみます。はこね学生音楽祭はこのご時世にかなり太っ腹なコンクール。年々レヴェルが上がってきている中、どこまで上位に食い込めるか。練習時間が限られているので指揮者の方でイメージをかなり固めておかないと仕上げが間に合いません。
合宿疲れも取れないうちに、ディズニーシーへ行ってきました。初。だいぶ前に買ってあったチケットの有効期限が切れそうなのに、気がつけば今日ぐらいしか行ける日がない。なので予定をやりくりして慌てて行ってきました。ディズニーランドは1日で回りきるのは難しいけど、ディズニーシーは1日あれば大体回りきれるんですね。思った程には混んでなかったので、一通り体験できたはず。ライティングされた園内が水面に映っていて、夜景がとてもきれいだった。どのアトラクションも一工夫あるので面白いことは面白いけど、僕はもっとストレートにスピードや動きを体感できる方が好きかなぁ。そう何度も行きたいとは思いませんでした。とは言え、1回は行ってみても良いと思います。歩き通しで非常に疲れました。これで3日程作曲できていないので、明日からは集中して作曲を進めないと。束の間の盆休み。
昨日、今日と2日間、神奈川の合唱団「相模台グリーンエコー」さんの合宿にお邪魔してきました。来年の5月に初演予定の委嘱曲について話し合うためです。グリーンエコーさんについては、2年前に1度、拙作「野菜畑のソクラテス」の演奏を聴いたことがあるだけで、合唱団の性格も指向もあまりわかりません。委嘱者を良く知りたい、という僕の希望に応えてくださったかたちで今回の合宿参加が実現しました。もっぱら練習を聴かせていただいて、あとは委嘱曲のテキスト、イメージについて話し合うだけのつもりだったのに、話の流れで、団内アンサンブルコンテストにまで参加して歌ってきました。カプレの3声のミサ。久々に楽譜を見て、恋い焦がれていた事を思い出しました。清澄で美しい世界。こういう、シンプルに輝く女声の曲も機会があれば書きたいなぁ。 委嘱曲のテキストについては、僕からも何種類か候補を提示して、合唱団側からもいくつか候補を出していただきましたが、話し合った今の段階では矢沢宰さんになる可能性が高いです。矢沢宰といえば萩原英彦先生の作曲した「光る砂漠」が有名ですが、あれには使われなかったテキストの中にも、まだまだ素敵な詩がたくさんある。やわらかく光り放つような世界が、グリーンエコーさんの音色、音楽にはマッチするんじゃないかな。まだまだ選択の余地はありますが、しばらくは矢沢宰の方向を探っていきます。
丸々一日外出。久しぶり。午前中に関わっている合唱団の練習@文京シビック。ダウランドのcome againほかを練習。小品ながらも奥行きが見えていい曲です。その後四谷区民ホールの創る会の演奏会へ。(招待券がまわってきたので。)ところがちょうど赤坂見附駅で火災発生だとかで、遠回りを余儀なくされてしまいました。1時間近くもかけてようやく新宿御苑に到着。創る会の演奏会は何年かぶりに聴いたけど、予想以上に面白かった。北爪作品(久しぶりに大学合唱団で理解度の高い演奏に出会いました。)や山本作品も面白く聴いたけれど、近藤作品が出色の面白さ。サッフォーと現在の違和感の無い同居が心地よかった。失礼ながら、臨時編成で、あまり能力の高くない合唱団だとは思うけど、それでも音楽が面白く聴けるのは、指揮者のなせるワザなんだろうな。いろいろと刺激を持ち帰りました。こういう活動に情熱を持つ人がいてくれるというのは大切なことです。コンサート後はペーパーアイテムを選ぶために表参道のwinged wheelへ。初めて行ってみたけど、思ったような商品が見つかって満足。サンプル用にたくさん買い込んできました。一部からバラ買いできるのが嬉しいところです。筆無精なくせに、いずれ専用のレターヘッドとか作ってみたくなるなぁ。このお店、行ってみたらなんとNADiffのごく近くではありませんか。嬉しくなって、NADiffにも何年かぶりに寄ってきました。以前はここで現代音楽のCDやら楽譜やら美術関連の本なんかを見つけて買っていたものです。懐かしい。思いっきりフォーレのレクイエムなんかが置いてあったのにはちょっと驚き。前は「ど」クラシックみたいなのは置いてなかったような気がするんだけどなぁ。方針変えたのかな。澁澤龍彦関連書が充実しているあたりは相変わらずだけど。ちょうどサマーセールだとかで、売れないCDを500円で売っていたので、その中からクセナキスのサックスカルテットだとか、アンサンブルモデルンが演奏したユン・イサンの作品集だとかを掘り出してきて購入。僕の運は殆どワゴンセールで使い果たしているのかもしれません。現代音楽のCDを買った時特有の期待感を胸に帰宅。さて買ったモノはアタリかハズレか。