講習・講座

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Max Reger (1873-1916)の美しい合唱曲Nachtlied, op.138-3のテキスト分析です。テキストの作者はPetrus Herbert (1533-1571)というプロテスタントの神学者。詩作でも有名な方。

ある合唱団からこの曲の指導を依頼されて楽譜を見てみたのですが、国内で唯一(?)出版されているこの曲の楽譜の歌詞ページではなんと、もともと2行であるところが1行にまとめられて掲載されていました。新聞のようにスペースがないから「/」で改行を示すというわけでもなく、単に行をつなげただけ。詩において改行をどこで行うかはその詩のアイデンティティにもかかわる重大事です。それをそんな形でずさんに扱うなんて。

こんな場面でも「西洋詩の読み方」の基本が周知されていない事に愕然としたので、簡単な分析を行いました。 学術的に正しく研究したいわけではないので、ネットから拾ってきたテキストを資料としたものですが、公開しておきます。

別に特別なものではなく、この種の西洋詩を構造的に分析する場合の基本事項を書き起こしただけのものです。演奏指導のための分析なのでMax Regerの付曲がどのように行われたかを反映している点はある程度ユニークかもしれません。ただしこれも、本来は誰でもできる程度の、解釈のための出発点(=事実確認)ですし、演奏する人なら当然知っておきたい前提知識です。

従って細かい解説は書いてありませんし、演奏するためには当然音楽的な分析も必要です。より詳しく興味のある方、しっかり学んでみたい方は個別にご連絡を。

→ Textanalyse (PDF)

SNSでのみ告知していたので、こちらでは報告のみになってしまいましたが、1月26日に連続講座「対位法から和声へ」の第2回を行いました。

今回取り扱ったのは、ヨーロッパで13世紀から15世紀にかけて使われていた記譜法である「定量記譜法 mensural notation」。前回紹介したネウマ譜との、音楽上生じる違いを説明する入門編。ですが、いきなり定量記譜法の奥義とも言えるオケゲムの「比例ミサ Missa prolationum」を具体的な例として紹介したほか、同じオケゲムの「任意の旋法によるミサ Missa cuiusvis toni」の紹介をし、実践的な例え「定量記譜法でしか表し得ないもの」を解説しました。

実際に音符の一つ一つに分け入って、オケゲムの手と耳を追っていくような作業は、僕自身にも刺激的で面白い時間でした。

 

今回の参加者で、普段は宗教曲を多く取り上げる合唱団で歌っているというNさんの感想の転載許可を頂いたので、以下に転載します。

 

本日出席した、lecture日独楽友協会主催・連続音楽講座
『対位法から和声へ 第2回
”定量記譜法の基礎とオケゲムの比例ミサ” 」

・・・・のノートまとめ中。あまりに濃い内容と、資料も多いので、まとめるのにも時間がかかる。ああ、大学時代を思い出すわ。
タイトルだけ観ると、音楽の講習とは思えないよねー”定量”とか”比例”とか、まるで数学の授業のようだ。

実際、講座を聞いてみると確かに数学的要素が満載。
というかほとんど全て。
やっぱり音楽って数学から来ているんだ。理性だ。左脳だ!?

最初のネウマ譜の回は事情があって欠席したんだけど、悔やまれるわ。合唱とか歌にはあまり関係ないかと思ってたのだが、逆だった。

宗教合唱曲を歌うなら聞いておいて損はない、どころか重要な知識。
たとえBrevisがなんだとか定量譜が完璧に読めなくても、
「ああ、ここで3という数字が出てくる。Trinityだ。三位一体だ。
でその倍数でここまでくるのか。
さすが基督教!」
・・・・と頭に入れられるとそれだけで全然違うと思う。
そして頑張ってみたらば、
美術館とか博物館で奇麗な羊皮紙に書かれた譜面をみて、
いきなり歌えちゃったりするかも?

さて、もうひと頑張り。

 

定量記譜法は、現代記譜とは違っているし、今ではルネサンス時代の曲の多くは「翻訳」された現代記譜のものが入手できるので、定量記譜法の読み方を知らないままにこれらの音楽に接している方も多いと思いますが、翻訳の過程で生まれるデメリットも存在します。それは具体的にどういう事か?という事にも触れつつ、大作曲家オケゲムの凄さの一端をご紹介しました。

 

この連続講座、次回は3月に開催予定です。詳細が決まったら追って発表します。

前の投稿でお知らせしていた安積道也合唱講習会が無事終了致しました。

参加して下さった皆さん、ありがとうございました。

運営的には、私の気づかなかった中にもいろいろ不手際な点もあったかと思います。今後改善していければと思いますので、忌憚のない意見をお聞かせ頂ければ幸いです。

また、今回キャパシティの関係で、あるいは日程の関係で参加できなかった方も多くいらっしゃるかと思います。2回目の開催を、との声も早速届いていますので、案内をご希望の方は、よろしければ私までメールをお送り下さい。開催が決まった際には要項発表と同時に案内メールを送らせて頂きたいと思います。

 

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※ 6月25日追記:予想を上回る応募を頂いたため、開催会場を変更しました。キャパシティが増えたことに伴い、全パートとも若干名を追加募集いたします。

※ 6月26日追記:ソプラノとアルトは追加募集を締めきりました。テノールはブロック2と3,バスはブロック3のみ、引き続き募集中です。

フライブルク音大で合唱指揮を学んだ安積道也(あづみみちや)さんという素晴らしい合唱指揮者がいらっしゃいます。僕は彼の音楽作りに惚れ込んでいるのですが、ドイツからの帰国後、福岡を拠点に活動なさっているので、東京圏ではまだあまり知られていない存在ではないかと思います。

でも、こんな才能が東京圏で知られていないのはもったいない!という事で、安積さんの上京の機会に便乗して合唱講座を開催する事にしました。合唱をしている方にとっては、なかなか他では経験できない目からウロコの新鮮な体験になるのではないかと思います。

日程の迫った話ではありますが、まだ東京での活動が少ない安積さんの音楽作りに触れられる貴重な機会です。部分参加もできますので、是非参加をご検討下さい。

※1 安積さんのプロフィールをご覧になりたい方はこちらをご覧ください。

※2 安積さんのブログには、日本ではなかなかわからない、ドイツの教会音楽家の仕事を垣間見る事ができる貴重な記述がたくさん含まれています。

※3 安積さんのフライブルク音楽大学合唱指揮科卒業試験の様子もご参照下さい。日本ではまだまだ「専門教育としての合唱指揮」の実際が想像しにくいのではないでしょうか。僕はこの時偶然立ち会うことが出来ました。

 

安積道也合唱講習会

◯概要

ドイツ・フライブルク音楽大学で教会音楽科と指揮科(合唱指揮専攻)をそれぞれ修了し、 ドイツでも活動されていた教会音楽家・合唱指揮者の安積道也(あづみみちや)さんを講師に招いての合唱講習会です。

安積さんは現在、福岡を活動の拠点としていらっしゃいますが、安積さんの声の仕組みへの知見と、深く言語に根ざした音楽の構築法は、広く知られ共有されるべき演奏の基礎だと言えます。

そこで、関東圏の合唱関係者にも安積さんの類まれな合唱指導を体験する機会を設定したい思い、安積さんが上京する機会に便乗して今回の講習会を企画しました。

講習会は全体で4ブロック。それぞれ違う様式を取り扱います。全てに参加するも良し。興味のあるブロックだけ参加するも良し。ドイツ仕込みの特別な合唱体験をお楽しみ下さい。

◯日時

2012年7月7日(土)10:00〜17:00

会場(変更しました)

ミュージックスタジオ エクシア Dスタジオ

東京都 港区 東麻布 1丁目 8番 4号 パークハビオ麻布タワーB1

※都営大江戸線「赤羽橋」駅 中之橋口・赤羽橋口 徒歩4分

※都営大江戸線・東京メトロ南北線「麻布十番」駅 6番出口 徒歩9分

※東京メトロ日比谷線「神谷町」駅 2番出口 徒歩9分

詳しくはこちらの地図をご確認ください。東京タワーの近くです。

◯参加費
  • 3ブロック参加の方:3000円(学生2000円)
  • 2ブロック参加の方:2500円(学生1500円)
  • 1ブロック参加の方:1500円(学生1000円)

参加費は当日、会場にてお支払い下さい。

◯参加資格

特になし。ただし事前にある程度、課題曲の音取りが出来る方。

◯申込期限

2012年7月5日(木)

申し込みの際には以下の項目を書き添えてメールにて連絡をお願いします。

  • 氏名
  • 連絡先メールアドレス
  • 緊急連絡用電話番号
  • 参加ブロック番号(1, 2 ,3の数字でお知らせ下さい)
  • 希望パート(普段のご自分のパートをお書き下さい。複数パートへの申請可)
  • 学生の方は「学生」とお書き添え下さい。

※ 申込み多数の場合、募集を締め切らせて頂く場合がありますので予めご了承下さい。

◯問い合わせ先 & 申込先

堀内貴晃 takaaki@ht-music.com (※連絡はメールでお願い致します。)

◯時間割
▼ワークショップ0:10:00〜10:30(30分。全参加者が受講可能)

テーマ:声についての認識・声の機能について・機能的に見た「声の準備運動」

▼ワークショップ1:10:30〜12:15(105分)

テーマ:ルネサンス様式

・ポリフォニーの歌い方

・発声方法(声の機能・息と共鳴腔の使い方)

・Messa di voce

・調律(=音程の取り方)

課題曲:William Byrd作曲 Ave verum corpus

※ 使用する楽譜はこちら。(PDFにリンクします)

▼休憩:12:15〜13:00(45分)
▼ワークショップ2:13:00〜14:45(105分)

テーマ:ルネサンスから初期バロックへ

・ホモフォニーの歌い方

・ドイツ語の発音(子音と母音の作り方)

・ディクション

課題曲:Heinrich Schütz作曲 Also hat Gott die Welt geliebt SWV 380

※ 使用する楽譜はこちら。(PDFにリンクします)

▼ワークショップ3:15:00〜16:45(105分)

テーマ:ロマン派

・ドイツ語の発音(子音と母音の作り方)

・音色に合わせた様々な体の使い方

・アゴーギク

課題曲:Johannes Brahms作曲 Waldesnacht, Op.62 Nr.2

※ 使用する楽譜はこちら。(PDFにリンクします)

ゴールデンウィーク中の5月1日と2日に、さいたま芸術劇場で音楽講座を行います。テーマは「対位法」と「ヴェーベルン」。

日独楽友協会の主催する指揮者講習会の一環ではありますが、専門家にしかわからないようなワケノワカラナイ話ではなく、「そもそもコレってどういう事なの」という視点から、音楽への接し方がより豊かになるような、根っこの話をします。知っていればいくらでも応用が広がる、大事な基礎の話。作曲をするための「書く技術」の話ではなくて「読む技術」や「聴く技術」につながる話です。専門家ではない方にも(むしろそういう方にこそ)オススメしたい内容です。

外部の方でも聴講可能ですので、ご興味のある方は是非お越しください。

 

  1. 5月1日(火)19:00〜21:30(途中休憩15分あり) 会場:さいたま芸術劇場
    前半「ルネサンスからバロック時代の対位法1」
    後半「ヴェーベルンの作曲技法1」
    聴講料:2500円
  2. 5月2日(水)19:00〜21:30(途中休憩15分あり) 会場:さいたま芸術劇場
    前半「ルネサンスからバロック時代の対位法2」
    後半「ヴェーベルンの作曲技法2」
    聴講料:2500円

お申し込みやお問い合せは日特楽友協会のホームページに記載のメールアドレスへお願い致します。

 

開催時間と聴講料がホームページに記載されているものと違いますが、上記の情報が最終的なものです。指揮講習会の他の開催日を想定して聴講料が1日5000円と設定されていましたが、講座単独の聴講に対しては時間あたりの料金が割高になるために値下げする事に致しました。もちろん、だからといって内容が半分という事はありません。音楽生活がずっと豊かになるような内容を提供すべく、現在準備を進めています。

 

特に「ヴェーベルンの作曲技法」では「12音技法」という、何やらムズカシそうな、その一方で規則が単純で理解しやすい作曲技法の存在のために、「ヴェーベルンの分析」=「音符ごとに1から12まで番号を振っていって順番を確かめたら分析終了、ちゃん、ちゃん!」と理解される事が多いように思います。時には専門家レベルでもそうですし、論文や公刊された本でもそうした論説を見かける事があります。

でも、同じレベルの分析を、例えばベートーヴェンのソナタに対してはやらないでしょう?

どこの和音がIでメロディはその第3音で、次の和音はVでメロディは根音で、という名前付けをしても、それよりもっと大切な物が他にあるでしょう?という話になるのが普通。

ところが「12音技法を使った作品の分析」というお題目が掲げられると、多くの人が何故か、枝葉末節にしかならない数字の順番にばかりこだわり始めてしまいます。それは、実は「12音技法」が「和声法」や「対位法」などと比べて格段にわかりやすい技法だから(五線を読める人なら誰でも、15分説明を受けて素直に従えばすぐに作曲を始められます)、思わずその「わかりやすさ」に飛びついてしまうのではないかと思います。

そう、難しいゲンダイオンガクの諸悪の根源みたいに思われる12音技法は、実は他に類を見ないほど「カンタンな」作曲技法なんです。

 

もちろん、作曲技法の原理が簡単か難しいかという話と、結果生まれてくる音楽の価値は別のものです。「作曲」と「作曲技法」はイコールで結べるものではありません。

今回のヴェーベルンでは、そういう数字割り振りのオママゴトは通りすぎて「曲の把握を助けてくれる視点」をお話しようと考えています。そして、今回は嬉しいことにルネサンス音楽とのカップリングでテーマ設定していますから、できればルネサンス音楽の発想法がどのようにヴェーベルンの作曲技法につながっているか、という話題にも言及したいと思っています(フライブルク音大の卒業試験での僕の口頭試問テーマでもありました)。

ただ、2日間の合計3時間でどこまで話せるかは未知数。これから時間配分をよーく考えます。

#ヴェーベルンの枠では指揮講習会でも取り上げる「協奏曲」作品24をメインに据えますので、講座に参加予定の方は、できれば事前にこの曲を少し予習してくることをお勧めします。
既に著作権は切れているんですが、IMSLPには楽譜は無いようですね。 国内の楽譜屋さんで探してみてください。音源はYouTubeにもいろいろあるようです。