詩人の佐々木幹郎氏がある講義で話していた余談。

モノづくりの秘訣は加算ではなく減算にこそある、と。文学でも音楽でも大半の1流ではない人たちは、思いきって作品から要素を削ることができない、と。(思い当たるフシがあるので耳が痛い)ここからきつねうどんの元祖のお店の話まで飛躍していました。この「元祖」のご主人曰く、「自分が持てる技を100%使った料理をしていたら、一度しか食べてもらえない。技術を抑えて85〜90%くらいにして料理してこそ毎日食べて貰えるきつねうどんになる」そうです。なるほどねぇ。なんとなくわかるような気もします。このお店は、大阪の船場にある「松葉家」。現在、唯一天然モノの薄口醤油を使って味付けしているお店らしいです。関西方面に行く機会があれば食べてみたいな。

ただいま朝の8時。これから飛行機に乗って石川県まで行って来ます。必要な楽譜をさっき書き上げたところです。とある高校の吹奏楽部の練習に行ってくるわけですが、そこが今度のコンクールで演奏する曲の中に、各自が自由に即興演奏してカオスを作る、という現代音楽とかフリージャズなんかで良くやる表現を使う部分があって、僕のところに、その即興部分を書いて埋めて欲しい、という依頼があったのでした。僕もそういったスコアリングをしたこともありますが、もともとこういうのは「何が出てくるかわからない」とか「演奏のたびに音響が変わる」とかいったことに狙いがあるわけで、音符を書いて定型化してしまうと、それは全くつまらない別物になってしまう恐れが往々にしてある。けれど、一方で別にプロでもない高校生がこうした即興を急にやらされてもイメージできる音響が限られるだろうし、戸惑っておしまい、ということにもなり兼ねない。そこで顧問の先生と話して、両者の中間点として各楽器ごとにある程度の素材を提供して、それを組み合わせたり発展させて「即興的な」状態を作る練習をする、ということに落ちついたわけです。それで、ついさっきまで、ステージで使われる可能性が薄そうな音符を、様々なパターンでひたすら書きつけるという作業をやっていました。で、今日の部活の練習時間で、それをネタに、概念や手法を伝えてくることになります。ワークショップみたいな感じになるのかなぁ。こんな依頼を受けたのは初めてなので僕にも想像がつきません。飛行機の中で手順の組立をしておかないといけないな。

実はまだ引越しが完了していなくて、前の住所には小物などがいろいろ残されたまま。それを時間のある時に少しずつ自転車で移動したりしていたんですが、それも今日でおしまい。全部の荷物を運び終えて、最後の掃除も終えて、2年間お世話になった大家さんにご挨拶。鍵も返して、日割り分の最後の家賃も納めてきました。たった2年間とは言え、やっぱり感慨は沸いてきます。僕はこれから死ぬまでにどれくらい引越しをするんだろう、とかね。今日を引越し作業最後の日にしたのには、前の住所での投票をついでに済ませてしまおうという意図もあったわけです。が、投票会場でビックリ。東京都知事選の立候補者が3人だと思いこんでいたのに、候補者にドクター中松の名前が!たしかにここ2週間ほどはバタバタしていて新聞も、テレビのニュースすらも殆ど目を通してなかったけど、ドクター中松のことを報道していたのかなぁ?選挙の公示掲示板でもとんと見かけた覚えがなかったしなぁ。こういう機会に、フロッピーディスクを考案したのはそういえば彼だったな、なんて思い出すんだから、もはやある種の風物詩ですね。選挙といえば、羽柴誠三秀吉さんが今回は出馬していなかったようだけど、どこか他の地方で出馬していたのかな?ちょっとだけ気になります。

和声の生徒さんのレッスンなどをしたあとに、夜は合唱団の練習へ。これで3回目の出席。ようやく他の団員さんの顔ぶれも見えてきたところ。名前まで覚えきるにはもうしばらく時間がかかりそうだけど、なんとなく顔とパートくらいは一致するようになってきました。声の方はやっぱりまだまだダメダメ。一朝一夕に作れるものではないことくらいはもちろんわかっているのだけど。それでも3時間歌えるだけの喉の耐性はついてきたかもしれない。

LANカードのドライバーが見つからないので、止む無く新しいLANカードを購入。(我ながら愚かだ) 1000円くらいの損で済んでよかった。これで無事に回線につながるんだろうか。午後からはピアノの引越し。前の住居にはしばらくピアノが置いたままになっていたのだ。でも、なんでこう言う日にひどい雨模様になるかなぁ?2時頃に業者さん到着。雨の中、前の住所からピアノを搬出してもらって(せまいので大変そうだった。)新しい住所へ。新しい住所では階段を上って搬入してもらう予定だったけど雨と階段の狭さゆえに断念。作戦を変更してクレーンで直接2階に搬入することに。(新居の窓は異常に広々としている。)ところが、一度つるし上げてみると手すりが高すぎて、起こした状態では入らないことが判明。手すりも外せないので、今度はやや斜めに倒した状態で再チャレンジ。しかしこれも失敗。深く斜めに倒した状態で再チャレンジしてようやく、ぎりぎりで搬入できました。急がば回れ、ということですね。目分量はアテになりません。最後の方にはアップライトピアノ1台の搬入のために業者さんが7〜8人ほどもついて大掛かりなものになってました。結構圧巻です。6時を過ぎた頃になってようやくピアノの搬入が終了。予想以上に大変なピアノの引越しになりました。(大掛かりになったことで請求額がハネ上がるのを心配しましたが、当初の予定金額と変更なしで落ちつきました。一安心。27000円ほどでした。)ピアノが入ってから慌てて池袋へ。友人たちとのお食事会。久々に会えた顔もあって楽しかったです。池袋の鳥良(ヤマハの斜めむかいあたりのビルの地下です)、なかなかおいしいお店。

すみだトリフォニーまで行って新日フィルの定期演奏会。モーツァルトのピアノ協奏曲21番とマーラーの4番。特に何箇所かで、神がかったような美しい音色でPPの和音が響いていた。木管群の活躍なのかな。ああいう音色を想定するなら、ごちゃごちゃ音を動かさなくてもひとつの和音だけで勝負しようと思えるのかもしれない。新日フィルは時にそうした側面を見せてくれるオーケストラだと思う。

明日が締め切り予定で頼まれた金管バンド用のアレンジ3曲完成。既にパート譜のプリントアウトも終わって、あとはクライアントに渡すのみ。締め切りに余裕を持って全てが終わるのは気持ちのいいもの。アイルランド民謡ばかり3曲を殆どサイズを変えずにアレンジするという注文だから、作業量としてはさほど多いわけではないんだけどね。ロンドンデリーの歌はもともとよく知っている。いろんなアレンジもある。庭の千草は今回改めて見直したけれど殆ど旋律構造が変わらないので和声付けが大きく印象を左右するはず。うっかりするとやたら単調な曲になってしまいます。フェルマータする部分の表情がなんとも言えない。もう1曲のガチャガチャバンドという曲は全く知らなかった曲。検索してみてもあまり情報が見つからなかった。シンプルながらも結構面白い曲。あちらの言葉で歌うと早口が面白くなるらしい。何日か前にテレビでやっていた舞踏家の大野一雄さんのドキュメンタリーの中でも庭の千草が何度も歌われていた。老いて殆ど体の自由の利かない大野さんが故郷の函館でステージに立って、それでもなお踊り続けていた風景が印象に残っている。手で舞うだけでも、異常な求心力を持って訴えてくる。あの手の動きは何なのだろう。技術とか型とかを超えたところにあの動きがあるような気がする。舞踏やダンスは、もっと若い人たちだけのものかと思っていたけれど、それが誤りだと知った。

作曲はじわじわ進めています。が、なかなかまとまった時間を作れないのが困ったところ。時間を上手く使えれば解決するのだろうけど、難しいですね。でもなんとかするしかありません。今書いているのは結構シュールな曲に仕上がりそうです。曲の中で大胆に自由に遊べたら面白い曲になってくれそうだな。今日は長い間溜めまくっていた著作権協会の作品登録申請書を書いていました。10曲くらいまとめて申請。1曲出来る毎に申請しておけばラクなんだろうけどねぇ。こういうところのルーズさも悪いところです。はやく直さないと。この申請書に書くのは曲名や歌詞(歌モノの場合)、権利者名(作曲者以外にも作詞者とかね。)、いつ公表されたか、などの項目に加えて曲の冒頭のメロディを5線譜で書く欄があったりします。一応「可能な範囲で書くこと」という但し書きはあるけれど、そもそもメロディらしきメロディのない場合にはどうするんでしょうね。(すぐに意地悪いことを考えてしまう僕)現代音楽の類は困る曲がかなりあるはず。例えばリゲティのアトモスフェールみたいな曲の冒頭部から、どこを取り出してきて記譜するのか。現代音楽でなくてもたとえばパーカッションアンサンブルとか、ラップとか、困る場面が多そうです。今回僕の申請したのはいたってありきたりの曲ばかりだったので問題なかったけど、そのうち困ることも出てくるだろうなぁ。その他には、歌モノの場合には歌詞の歌い出しの部分を書く欄があったりします。こういった各項目を書いていって、「この曲が他の曲とは違う自分の創作物である」という申請をするわけです。そして、作品が演奏会で演奏されたりする機会があれば使用料の一部が入金されてくると、そういうシステムです。(諸経費を差し引かれます)たくさん演奏されている人はどうだかわかりませんが、僕なんか年に何百回も演奏されているわけじゃないので入金されるのも雀の涙ほど。著作権協会に入会金も年会費も収めるから差し引いてみるとマイナスになることもあるくらい。「印税生活」なんて言葉が夢のような楽な生活の代名詞に使われたりしますが、僕にとってはまさに夢のような遠い世界の話です。シリアスミュージックの作曲をやっている限りは印税生活なんて夢のまた夢です。まぁ、儲けようと思って敢えて作曲を選ぶほど馬鹿じゃないし(絶対に他の職業の方が確実に稼げるでしょう)、印税生活できなくてもいいんですけどね。(と強がってみる。)

180ページほどあるスコアの原稿を鮮明な印刷モードで印刷しています。うちにあるのは4年ほど前のインクジェットなので、2日間プリンタが動きつづけているのにまだ終わりません。(涙)結構音がうるさいので夜だけがプリンタの休息時間。もう1日くらい頑張ってもらえば終わるかな。プリンタが動いている間はパソコンでの作業が遅くなってストレスを感じるので、作曲の作業はもっぱら出来た部分の入力よりも新しい部分を作るほうに向いています。まだ全体の何%くらいできているのか自分でもわからないけれど、今はちょこちょこアイディアは出てくるのでとりあえずいろいろメモしたり、実験したりを繰り返しているところ。少しずつ曲が流れ始めました。この状態になってから全貌が見えてくるまでの時間がもどかしくも面白いのだ。一番熱中する時間。(全貌が見えてからはむしろ冷静に、曲をまとめるためのあれこれや演奏のためのあれこれを調節していきます。)そんなこんなで印刷やら作曲やらを並行してすすめているわけですが、世間は今日はバレンタインデー。今年は面白いものを貰いました。kitty1うまく見えるかな?画像が粗くてすみません。「バレンタ医院マスク&舐茶飴セット」と書いてあります。大胆なネタがツボにはまってしまってしばらく笑いが引きませんでした。用法は1日1回で3日分(舐茶飴が3つ)。昼食前に服用するそうです。中にはちゃんと診察券も入っているという凝りよう!花粉症持ちにはありがたいですね〜。(涙)それにしてもキティちゃん。キャラクター商品の種類が最近異様なくらい増えている気がします。テレビやドライヤーなんて当たり前。パソコンにもキティちゃん仕様とかがあるんですねぇ。そのうちキティちゃん仕様の住宅とか車なんかも出るんでしょうか。近未来にはキティちゃんに顔が似るDNAを売り出してたりして。(^^ゞキティちゃんの体重はリンゴ3個分(持ち運びできそう)と、豆知識を披露したところで本日の日記はおしまい。明日も作曲頑張りましょう。

去年の夏ごろに書いた中学生向けの合唱曲「出発」(詩は高階杞一氏)が世に出ました。昨日あたりから店頭に並んでいると思います。楽器屋さんか書店で探せば見つかるのではないでしょうか。(この雑誌は学校で教えている音楽の先生を主たる対象に据えているので、身近な音楽の先生に尋ねてみるのも良いでしょう。)曲の質をなるべく高く保ちたい、ということと技術的な難易度を極力下げたい、ということは必ずしも相反する要素ではないけれど、簡単に両立できるものでもありませんね。そのことを今回は痛感しました。簡単なもの、質の低いもの、単に取り組みやすいだけのものを狙って作ることはできるでしょうが、僕はそうしたものを子供たちに与えることが良い教育だとは思えません。けれど一方では現実に、極端に少なくなっている授業時数の問題もあるわけで、そのことに対応しないと現場で使える曲にはなりません。値段は下げるけれど味は保つ吉野家のように努力・試行錯誤を重ねて、取り組みやすく、含蓄もあるものを書けるようになりたいものです。願わくば、小学1年生の1学期向けの曲と小学1年生の2学期向けの曲を書き分けられるくらいに違いを極められたら嬉しいのですが。難しいかな。「出発」の楽譜をご覧になったり実際に演奏した方がいらっしゃれば、是非ご意見・ご批判をいただけると嬉しいです。次回作以降に還元していきたいので。よろしくお願いいたします。

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